何度目かのため息を付いたところに、ノックがあり叔母のキャスリーンが姿を見せた。
「まあ、何というだらしのない!」
キャスリーンの声に、アイリーンは慌てて起き上がるとベッドから下りて直立した。
「その体たらくは、おなかが減ってのことでしょう?」
クスリと笑みを漏らしながら言うキャスリーンは、手に持ったサンドイッチをアイリーンに手渡した。
「コーヒー一杯に慣れるのには、一年はかかってよ」
まさに、経験者は語るだった。キャスリーンがサンドイッチを手渡すと、アイリーンはベッドに座り早速サンドイッチに取りかかった。そんなアイリーンを笑顔で見つめながら、キャスリーンは机の椅子に腰を下ろした。
「さすがに、コーヒー杯ではお腹か減るでしょう?」
キャスリーンの言葉に、アイリーンは恥ずかしそうに頷いた。
「はい。パレマキリアでは朝食が小さいパンとコーヒー一杯だというのは知っていたのですが、まさか、タリアレーナではコーヒー一杯だけだなんて、驚きしました」
アイリーンの正直な感想に、キャスリーンは満面の笑みを浮かべた。
「最初の一年は、私も随分とひもじい思いをしたものです。嫁いできて、いきなりコーヒー一杯だけですもの。最初は、嫁いびりかと疑ったほどです。でも、ロバートもお義母様も、お義父様も、みんなコーヒー一杯でしょう。ああ、これが常識なんだわと考えてみると、デロスに居た時、ロバートが朝食が重いと話していたことを思い出しました」
キャスリーンは懐かしそうに言った。
「叔父様に、ご挨拶できないのは心苦しいのですが、やはり、私と叔母様が似すぎているのは、言い訳に困りますよね?」
アイリーンの言葉に、キャスリーンは苦笑いした。
「もう、長いこと逢っていなかったでしょう。だから貴方が、こんなにもお姉様にそっくりになっていたなんて、考えても居なかったのです。でも、使用人の口から旦那様の耳にはいるのもそう遠くない事だと思います。だから、その時は、殿下のことも正直にお話しするしかないでしょう」
キャスリーンは言いながら、最初から侯爵にウィリアムがデロスの王太子だと話すべきだったと後悔して居ることをもらした。
「ですが、それはお兄様の希望でしたから。一学生として、タリアレーナでは普通の貴族の子息として暮らしたいと。異国の地で貴族の子息の生活を知るのも良い勉強になるだろうからと。そうおっしゃって、叔父様にも王太子としてではなく、ただの甥として扱って欲しいと、そう望まれたのですから。叔母様のせいではございません」
アイリーンは心からそう思っていたが、一国の王太子を預かりながら、行方不明にするなど、保護者としての監督不行き届きもいいところ、ことが公になれば、タリアレーナにはデロスを害する意図があったのではないかと疑われ、外交問題に発展することは間違いなかった。
「ありがとう、アイリーン。ああ、ダメね。ローズと呼ばないけなかったのに。気をつけないと」
キャスリーンは言うと、愛しげにアイリーンの事を見つめた。
「陛下が、あなたの降嫁を望まれた理由がよくわかるわ。今のあなたは、陛下に出逢った頃のお姉様に生き写しなのよ。それなのに、パレマキリアに嫁ぐなんて、お父様が生きていらしたら、王宮に怒鳴り込んでいらしたでしょうね・・・・・・」
キャスリーンは言うと、頑固者の父のことを思い出して溜め息をついた。
「国のためですから、仕方がありません。でも、まずは、お兄様を見つけなくては・・・・・・」
「そうでしたね。殿下が無断で外泊をされるようになってから、ページボーイに後を付けさせていたことは話しましたね。まだ、子供なのですが、とても良く働く子なので、あなたとは歳も近いですし、使用人同士気安い付き合いは出来るでしょ。下手に若い使用人では、邪な想いを抱くかもしれませんが、あの子なら安心です」
アイリーンは、叔母の心遣いにお礼を言った。
「名前はコパルといって、隣国のアボロスという国から出稼ぎに来ている子です。タリアレーナでは、十五歳以下の子供を働かせる事は禁止されているので、そこはデロスと同じです。ですが、この法律はタリアレーナ国籍の子供にしか適用されません。ですから街で働く子供を見たら、隣国からの出稼ぎの子だと思ってください。そして、その子たちは、この国では人として扱われることはないのです」
キャスリーンの説明に、アイリーンはタリアレーナと海峡の間に小さな国が沢山あったことを思い出すとともに、『人として扱われない』という言葉の意味が理解できずに首を傾げた。
「まあ、何というだらしのない!」
キャスリーンの声に、アイリーンは慌てて起き上がるとベッドから下りて直立した。
「その体たらくは、おなかが減ってのことでしょう?」
クスリと笑みを漏らしながら言うキャスリーンは、手に持ったサンドイッチをアイリーンに手渡した。
「コーヒー一杯に慣れるのには、一年はかかってよ」
まさに、経験者は語るだった。キャスリーンがサンドイッチを手渡すと、アイリーンはベッドに座り早速サンドイッチに取りかかった。そんなアイリーンを笑顔で見つめながら、キャスリーンは机の椅子に腰を下ろした。
「さすがに、コーヒー杯ではお腹か減るでしょう?」
キャスリーンの言葉に、アイリーンは恥ずかしそうに頷いた。
「はい。パレマキリアでは朝食が小さいパンとコーヒー一杯だというのは知っていたのですが、まさか、タリアレーナではコーヒー一杯だけだなんて、驚きしました」
アイリーンの正直な感想に、キャスリーンは満面の笑みを浮かべた。
「最初の一年は、私も随分とひもじい思いをしたものです。嫁いできて、いきなりコーヒー一杯だけですもの。最初は、嫁いびりかと疑ったほどです。でも、ロバートもお義母様も、お義父様も、みんなコーヒー一杯でしょう。ああ、これが常識なんだわと考えてみると、デロスに居た時、ロバートが朝食が重いと話していたことを思い出しました」
キャスリーンは懐かしそうに言った。
「叔父様に、ご挨拶できないのは心苦しいのですが、やはり、私と叔母様が似すぎているのは、言い訳に困りますよね?」
アイリーンの言葉に、キャスリーンは苦笑いした。
「もう、長いこと逢っていなかったでしょう。だから貴方が、こんなにもお姉様にそっくりになっていたなんて、考えても居なかったのです。でも、使用人の口から旦那様の耳にはいるのもそう遠くない事だと思います。だから、その時は、殿下のことも正直にお話しするしかないでしょう」
キャスリーンは言いながら、最初から侯爵にウィリアムがデロスの王太子だと話すべきだったと後悔して居ることをもらした。
「ですが、それはお兄様の希望でしたから。一学生として、タリアレーナでは普通の貴族の子息として暮らしたいと。異国の地で貴族の子息の生活を知るのも良い勉強になるだろうからと。そうおっしゃって、叔父様にも王太子としてではなく、ただの甥として扱って欲しいと、そう望まれたのですから。叔母様のせいではございません」
アイリーンは心からそう思っていたが、一国の王太子を預かりながら、行方不明にするなど、保護者としての監督不行き届きもいいところ、ことが公になれば、タリアレーナにはデロスを害する意図があったのではないかと疑われ、外交問題に発展することは間違いなかった。
「ありがとう、アイリーン。ああ、ダメね。ローズと呼ばないけなかったのに。気をつけないと」
キャスリーンは言うと、愛しげにアイリーンの事を見つめた。
「陛下が、あなたの降嫁を望まれた理由がよくわかるわ。今のあなたは、陛下に出逢った頃のお姉様に生き写しなのよ。それなのに、パレマキリアに嫁ぐなんて、お父様が生きていらしたら、王宮に怒鳴り込んでいらしたでしょうね・・・・・・」
キャスリーンは言うと、頑固者の父のことを思い出して溜め息をついた。
「国のためですから、仕方がありません。でも、まずは、お兄様を見つけなくては・・・・・・」
「そうでしたね。殿下が無断で外泊をされるようになってから、ページボーイに後を付けさせていたことは話しましたね。まだ、子供なのですが、とても良く働く子なので、あなたとは歳も近いですし、使用人同士気安い付き合いは出来るでしょ。下手に若い使用人では、邪な想いを抱くかもしれませんが、あの子なら安心です」
アイリーンは、叔母の心遣いにお礼を言った。
「名前はコパルといって、隣国のアボロスという国から出稼ぎに来ている子です。タリアレーナでは、十五歳以下の子供を働かせる事は禁止されているので、そこはデロスと同じです。ですが、この法律はタリアレーナ国籍の子供にしか適用されません。ですから街で働く子供を見たら、隣国からの出稼ぎの子だと思ってください。そして、その子たちは、この国では人として扱われることはないのです」
キャスリーンの説明に、アイリーンはタリアレーナと海峡の間に小さな国が沢山あったことを思い出すとともに、『人として扱われない』という言葉の意味が理解できずに首を傾げた。



