お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 カルヴァドスの命令でクロードとパスカルは船を降り、人知れずアイリーンの警護につくこととなった。
 侯爵邸はそれなりに警備が厳しいので、あまり近くをうろつくと不審者として捕まる可能性があるので、二人は適度な距離をとり、クロードは表側をパスカルは使用人の出入りの多い裏口へと続くサイドのフェンス越しに敷地をぐるりと下見したあと、敷地の外から屋敷を見守る事にした。

 クロードとパスカルは正式にはアンドレに仕える私兵だが、カルヴァドスの命令には絶対服従のアンドレの下、様々な仕事をこなしてきたが、アイリーンが船に乗って以来、二人はアイリーンに接触しないように命令されていたので、二人はアイリーンの顔を知っているがアイリーンは二人の顔を知らなかった。
 どんな命令であれ、二人が目的を尋ねることも、意味を尋ねることもなかった。ただ命じられたとおり、二人が淡々と仕事をこなすのはいつものことだった。
 そんな二人に与えられた命令は、アイリーンの護衛と手助けだった。腕の立つ二人にとって、警護は当然の仕事ではあったが、相手が素性もわからないカルヴァドスのお気に入りの女性ということもあり、アンドレからは国賓待遇で警護をするように命じられていたので、しばらく侯爵邸の近くに籠城できるよう、馬も食料もしっかりと用意し、普段は目につかないように暗器と小型のナイフだけを携帯していたが、馬を隠している茂みの奥にはパスカルはサーベル、クロードはタルワールを隠してあった。

☆☆☆