お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 突然、夫人の話し相手にデロス王宮に仕える侍女が来たことは、少なからず侯爵を驚かせた。
「キャスリーン、エイゼンシュタインから留学中の甥子が行方不明なだけでも頭が痛いのに、今度はデロスからか?」
 帰宅した侯爵は迷惑そうに頭を横に振った。
「ロバート、二ヶ月ほどの短い間よ。姪のアイリーンの乳姉妹でもある、ローズマリーなの。伯爵家への輿入れ前の行儀見習いと言うよりも、義理のお母様と上手く付き合うための練習のようなものですから、あなたにはご迷惑はお掛けいたしませんわ」
 キャスリーンは侯爵をなだめると晩餐の席へと誘った。
 食前に、若い頃の古いドレスに袖を通したアイリーンの姿を見たキャスリーンは、アイリーンと自分が赤の他人だと夫の前で誤魔化すことは不可能だと判断したので、アイリーンはあくまでも使用人なので、晩餐は共にしないと侯爵には説明したが、二人がよく似ているという事は、早晩侯爵の耳に入るだろうと、キャスリーンは腹を括った。

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