お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 馬車の三人は、無言のまま港へと向かっていた。
「アニキ、本当に姫さんは、あそこに就職しちまうんですか?」
 詳しいことを知らないオスカーにカルヴァドスは、アイリーンは侯爵邸に就職したと説明していた。
「でも、アニキと交際を続けるなら、タリアレーナよりも、エクソシアの方が便利じゃありませんか? アニキはエクソシア出身だし」
 オスカーの言うのはもっともだった。
「仕方ないだろう。国をでる前に貰った紹介状があの侯爵邸宛だったんだから。何か月か働けば、新しい紹介状を貰えるから、そうしたらエクソシアに呼び寄せるさ」
 カルヴァドスは言うと、最後にアイリーンを抱きしめなかったことを後悔していた。
「アニキ、この辺で俺、いいっすか?」
 賑やかな街の様子にオスカーがそわそわするので、アンドレが御者に合図を送って馬車を停めさせた。
「明日には、船に戻りますから!」
 オスカーは言うと、街に消えていった。
 カルヴァドスとアンドレだけを乗せた馬車は、港を目指して再び走り始めた。
「カルヴァドス様、本当によろしいのですか?」
「アイリが心配だから、クロードとパスカルの二人を残す。二人には、陰ながらアイリを守ること、それから、アイリの助けをするように。もしもの時には、命を懸けてアイリを守るように伝えてくれ」
「かしこまりました」
 アンドレは答え、カルヴァドスは一言も口を開かなかった。

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