黒い大きな門は、王宮に参内する時の為のものではなく、侯爵が陸路、長距離を急いで移動するため、八頭立ての馬車を使うための造りだと、アイリーンにもカルヴァドスにも直ぐにわかった。
門の両脇には、屈強な男が二人、馬車の通行を妨げるように槍をクロスさせて誰何してきた。
「おろしてください」
侯爵家ともなると、街の流しの辻馬車がおいそれと入れる場所ではない。
あくまでも執事として振舞うカルヴァドスの手を借り、アイリーンは馬車を降りるとハンドバッグに移しておいた手紙を護衛に差し出した。
「私は、デロス王女、アイリーン様より、シュナイダー侯爵夫人をお訪ねするように申しつかって参りました。こちらが紹介状になります」
アイリーンが手紙を渡すと、門番は封蝋を見るなり直立不動の体制を取った。
「大変失礼致しました。どうぞ、お通り下さいませ」
カルヴァドスがアイリーンをエスコートして馬車に乗せると、馬車の前後のアンドレとオスカーが笑顔で愛想を振りまいた。
若くて可愛い気のあるオスカーの笑顔はともかく、アンドレの笑顔は、笑顔と言うより、引きつっているようにも見えて門番達は、逆に恐怖したが、それは顔には出さなかった。
門を抜け、整えられた木立を抜けると大きな屋敷が見えてきた。
「すっげー、ここ、お城ですか?」
大きな声でオスカーが尋ねるのをアンドレが呆れた様子で『静かにしろ』と窘めた。
馬車が玄関前に横付けされ、カルヴァドスが扉を開けてアイリーンをエスコートし、 御者とオスカーが荷物を下ろした。そして、オスカーが再び荷物を持ち上げる間もなく、家令が姿を現した。
「デロス王女、アイリーン様よりの書状をお待ちいたしました。奥様にお取り次ぎ戴けますか?」
アイリーンの言葉に、家令は三人を代わる代わる見比べた。
アイリーンが家令でも、この三人がフットマンと従者と第二執事だと言われたら、冗談も大概にしろと敷地から追い出してしまいそうな組み合わせだったが、デロス王家の紋章入りの封蝋の押された封筒の効果は絶大だった。
「この方達は、勝手の分からない私を港から送って下さった親切な方々です」
アイリーンの言葉に、家令が御者に労いと三人を港迄送る分の代金に手間賃を加えたお金を手渡した。
「みなさん、ありがとうございました」
アイリーンは三人に深々と頭を下げた。
「姫さん、お達者で。たまには、港の船まで顔を見せにきてくれよ。そうじゃないと、オレ、また、文字を忘れちまうかもしれないから・・・・・」
オスカーが今にも泣きそうな声を出した。
「ご健康をお祈りしております」
アンドレは礼儀正しく最敬礼した。
「お嬢さん、無事を祈ってる。それから、一刻も早く探し人が見つかるように」
カルヴァドスは別れのハグをしたかったが、家令の目があるので諦めて馬車に乗り込んだ。
「奥様をお呼びいたします。どうぞ、奥でお待ち下さいませ。お荷物は、当家の物に運ばせますので、ご安心下さい」
王女の伝言を伝えに来たという侍女なので、家令は最高のもてなしをするべくアイリーンを屋敷の応接間へと案内した。
門の両脇には、屈強な男が二人、馬車の通行を妨げるように槍をクロスさせて誰何してきた。
「おろしてください」
侯爵家ともなると、街の流しの辻馬車がおいそれと入れる場所ではない。
あくまでも執事として振舞うカルヴァドスの手を借り、アイリーンは馬車を降りるとハンドバッグに移しておいた手紙を護衛に差し出した。
「私は、デロス王女、アイリーン様より、シュナイダー侯爵夫人をお訪ねするように申しつかって参りました。こちらが紹介状になります」
アイリーンが手紙を渡すと、門番は封蝋を見るなり直立不動の体制を取った。
「大変失礼致しました。どうぞ、お通り下さいませ」
カルヴァドスがアイリーンをエスコートして馬車に乗せると、馬車の前後のアンドレとオスカーが笑顔で愛想を振りまいた。
若くて可愛い気のあるオスカーの笑顔はともかく、アンドレの笑顔は、笑顔と言うより、引きつっているようにも見えて門番達は、逆に恐怖したが、それは顔には出さなかった。
門を抜け、整えられた木立を抜けると大きな屋敷が見えてきた。
「すっげー、ここ、お城ですか?」
大きな声でオスカーが尋ねるのをアンドレが呆れた様子で『静かにしろ』と窘めた。
馬車が玄関前に横付けされ、カルヴァドスが扉を開けてアイリーンをエスコートし、 御者とオスカーが荷物を下ろした。そして、オスカーが再び荷物を持ち上げる間もなく、家令が姿を現した。
「デロス王女、アイリーン様よりの書状をお待ちいたしました。奥様にお取り次ぎ戴けますか?」
アイリーンの言葉に、家令は三人を代わる代わる見比べた。
アイリーンが家令でも、この三人がフットマンと従者と第二執事だと言われたら、冗談も大概にしろと敷地から追い出してしまいそうな組み合わせだったが、デロス王家の紋章入りの封蝋の押された封筒の効果は絶大だった。
「この方達は、勝手の分からない私を港から送って下さった親切な方々です」
アイリーンの言葉に、家令が御者に労いと三人を港迄送る分の代金に手間賃を加えたお金を手渡した。
「みなさん、ありがとうございました」
アイリーンは三人に深々と頭を下げた。
「姫さん、お達者で。たまには、港の船まで顔を見せにきてくれよ。そうじゃないと、オレ、また、文字を忘れちまうかもしれないから・・・・・」
オスカーが今にも泣きそうな声を出した。
「ご健康をお祈りしております」
アンドレは礼儀正しく最敬礼した。
「お嬢さん、無事を祈ってる。それから、一刻も早く探し人が見つかるように」
カルヴァドスは別れのハグをしたかったが、家令の目があるので諦めて馬車に乗り込んだ。
「奥様をお呼びいたします。どうぞ、奥でお待ち下さいませ。お荷物は、当家の物に運ばせますので、ご安心下さい」
王女の伝言を伝えに来たという侍女なので、家令は最高のもてなしをするべくアイリーンを屋敷の応接間へと案内した。



