「姫さん、達者でな」
「本当に、何から何まで、ありがとうございました」
 アイリーンは優雅に頭を下げた。
「それから、無理と無茶はしないこと」
「努力します」
 ふと、デロスの酒場での出来事を思い出したアイリーンが笑みをこぼした。
「必ず逢いに来るから、船を降りる前に・・・・・・」
 悲しくて返事が出来ず、アイリーンはコクリと頷いた。
「ああ、もうすぐだ」
 窓の外を見つめたカルヴァドスが言うと、間もなく馬車は減速した。