「アイリ、駄目だ。そんなの絶対に駄目だ!」
思わずカルヴァドスは声を上げた。
「駄目とは?」
「一度後宮に入れば、主も侍女も関係ない。皇帝が望めば侍女だからと夜伽を断ることは出来ない。今までも、侍女が解任した例はいくつもある。だから、絶対に駄目だ!」
知らなかったことなので、アイリーンは驚きに目を見開いた。
「あそこは、一度入れば罪人にならない限り、二度と外には出られない」
「罪人ですか?」
「そうだ。皇帝の命を狙うとか、解任中の夫人を故意に流産させるとか、皇帝お手つきの侍女に激しい折檻をして殺すとか。後は、皇帝以外の男と通じるとか。兎に角、罪人になれば外にでることが出来るが、行き先は地下牢か墓場。どちらも、後宮を出るとは言えない」
話には聞いていた後宮の事も、カルヴァドスから聞くと、酷く生々しいものに聞こえた。
たった一人の皇帝の寵愛を奪い合う女性達のしのぎを削る水面下での闘い。
夜伽に呼ばれても、身ごもらなければ、直ぐに飽きられるという。その逆に、余りに早く身ごもりすぎても皇帝は遊び心に水を注されたように、他の女性に目移りするという。
身ごもっても尚、皇帝に大切にされてこそ、初めて、そこに愛情があるのだと、それ以外の女性達は、ただ世継ぎを産むための道具に過ぎないと、兄のウィリアムは後宮の存在を全否定して、アイリーンを嫁がせることを全面的に反対していたことをアイリーンは思い出した。
しかし、どう頑張ってもデロスが吹けば飛ぶような小さな島国である以上、六ヶ国同盟に加盟する列強六ヶ国にアイリーンが嫁ぐことが望ましい。しかし、アイリーンへの扱いは、多少の差はあっても、同じようなものなのだと、エクシソシアの豊かさを目にしたアイリーンには、もう理解できていた。
思わずカルヴァドスは声を上げた。
「駄目とは?」
「一度後宮に入れば、主も侍女も関係ない。皇帝が望めば侍女だからと夜伽を断ることは出来ない。今までも、侍女が解任した例はいくつもある。だから、絶対に駄目だ!」
知らなかったことなので、アイリーンは驚きに目を見開いた。
「あそこは、一度入れば罪人にならない限り、二度と外には出られない」
「罪人ですか?」
「そうだ。皇帝の命を狙うとか、解任中の夫人を故意に流産させるとか、皇帝お手つきの侍女に激しい折檻をして殺すとか。後は、皇帝以外の男と通じるとか。兎に角、罪人になれば外にでることが出来るが、行き先は地下牢か墓場。どちらも、後宮を出るとは言えない」
話には聞いていた後宮の事も、カルヴァドスから聞くと、酷く生々しいものに聞こえた。
たった一人の皇帝の寵愛を奪い合う女性達のしのぎを削る水面下での闘い。
夜伽に呼ばれても、身ごもらなければ、直ぐに飽きられるという。その逆に、余りに早く身ごもりすぎても皇帝は遊び心に水を注されたように、他の女性に目移りするという。
身ごもっても尚、皇帝に大切にされてこそ、初めて、そこに愛情があるのだと、それ以外の女性達は、ただ世継ぎを産むための道具に過ぎないと、兄のウィリアムは後宮の存在を全否定して、アイリーンを嫁がせることを全面的に反対していたことをアイリーンは思い出した。
しかし、どう頑張ってもデロスが吹けば飛ぶような小さな島国である以上、六ヶ国同盟に加盟する列強六ヶ国にアイリーンが嫁ぐことが望ましい。しかし、アイリーンへの扱いは、多少の差はあっても、同じようなものなのだと、エクシソシアの豊かさを目にしたアイリーンには、もう理解できていた。



