お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 叔母がデロスから遠いエイゼンシュタインに嫁ぐに至っては、なんでも、かなりロマンチックな出逢いと、蕩けるような恋の煌めきがあったのだそうだが、幼い頃に母を亡くしたアイリーンは詳しくは知らない。
 そうなると、残るのは、タリアレーナ王国とエクソシア帝国。
 カルヴァドスが動き、エクシソシアが動いてくれるとしたら、デロスから初めて、一夫多妻の既に複数妻を持つエクシソシア皇帝に嫁ぐことになる可能性が高くなるだろうとアイリーンは思った。

 パレマキリア相手だから、九ヶ月も結婚を引き延ばすことが出来たが、エクシソシア皇帝に即日と言われれば、デロスに拒否権はないだろう。
 悩んだものの、アイリーンはカルヴァドスの耳に入れておくべきだと決心した。

「実は以前から、エクシソシアの皇帝から姫に結婚のお話が来ているのです」
「なんだって?」
 カルヴァドスは冷静さを失って声を上げた。
「パレマキリアを牽制することが出来る大帝国であるエクシソシアがデロスの守護者になってくださることをデロスも、何代も前から検討していました。ですが、エクシソシアは一夫多妻ですから、皇帝には既に奥様がいらっしゃいました。今までは、皇帝陛下が一夫多妻である事を理由に、お話をお断りしていましたが、パレマキリアのデロスを屍の山としても自国の領土に組み込むつもりであるという考えが分かった以上、エクシソシアが動いてくださるなら、姫は皇帝陛下の妻の一人になることを承諾せざるを得ないでしょう」
 全く考えていなかった事なので、カルヴァドスは声もでなかった。