お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 海峡付近は渦を巻く潮があり、船が危険だからと、一旦沖に出て居た船が目的地のタリアレーナを視界に納める距離迄近付くと、アイリーンは胸がぎゅっと苦しくなった。

(・・・・・・・・一生に一度の恋、相手がカルヴァドスさんで良かった。そうでなければ、私は犯してはならない過ちを犯してしまって居たかもしれない。カルヴァドスさんが、公爵家の子息だったから、添い遂げることの出来ない私との接し方を考えてくれたんだわ。私は、もう、これで幸せ・・・・・・・・)

 そう思っても、涙が後から後から流れ、アイリーンは自分で自分のことが嫌になるほどだった。

(・・・・・・・・ダリウス殿下は強引だし、意地悪だけど、でも昔から私とお兄様を招待してくださっていた。その心には、きっと両国が仲良くあるべき道を思い描いてのことだったに違いない。それなのに、私の知らないところで、ずっとお父様が婚約を拒否したりしたから、きっと、あの性格ですもの、あれ以外方法がなかったのよ。ちゃんと向かい合って話したら、ちゃんと私の気持ちを分かってくださるかもしれない。私にはデロスの民を不幸にするような不利な決断を受け入れることは出来ないけれど、もしダリウス殿下が一緒にパレマキリアだけでなくデロスの民の幸せも考えてくれるなら、私はデロスの王女として、ダリウス殿下に尽くす覚悟は出来ている・・・・・・・・)

 アイリーンは考えると、金庫の中にしまってあったデロス王女、アイリーンの封蝋で封をされた手紙を取り出し、降りる荷物を取り出しやすい場所にしまい直した。
 残った銀貨と、僅かな銅貨、そして、宝石は最後まで金庫に入れておくことにした。

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