王女との恋愛には制限が多い。口付けは額と頬まで、唇に口付けて良いのは結婚式の日取りが決まってからだ。
ただ、それはあくまでも人目がある場所でのこと、人目を忍んでこっそりと逢引きをしている場合は、その限りではない。とはいえ、この二年半、二人が逢引きをしたことはない。
「愛しいアイリ、陛下がお元気になられたら、私達の式の日取りを決めませんか?」
アルフレッドの言葉は、野心的な婚約者の言葉に聞こえ、アイリーンが恥じらう姿は端から見ると本物の恋人同士に見えた。
「フレド、でも、お兄様のお病気が治るまでは・・・・・・」
一見、愛を囁き合っている二人だったが、それぞれが注意しているのは、ラフカディオとアイゼンハイムの耳の動きだった。
二頭の耳がピンと立ち、方向を見極めて居る間は、愛を囁き続ける必要がある。理由は、枢密院のアイリーン派の大臣の一人であり、アイリーンとアルフレッドの婚約解消を望む一派の人間が近衛にも所属しているからで、アイリーンとアルフレッド不仲説は、そこから大臣の耳に入ったものと思われるので、近くに近衛兵が居る間は、可能な限り愛を囁き仲をアピールする必要があった。
二頭の耳から緊張が解れると、アルフレッドはスッとアイリーンの手を離した。
「失礼いたしました、アイリ」
「いいえ。謝る必要はありません」
近衛兵の気配が消えるなり、謝罪するアルフレッドにアイリーンの心が痛んだ。
アルフレッドが愛しているのはローズマリーで自分ではないと分かっているのに、改まって謝られると『本当はあなたの手など握りたくなかった』と言われているようで、アイリーンは寂しかった。
どんな悲しいことがあっても、いつも温かい腕でしっかりと抱きしめてくれた兄のウィリアムは、遠いタリアレーナの地で行方不明。思い出すとアイリーンは今にも涙が溢れ出してしまいそうだった。
ただ、それはあくまでも人目がある場所でのこと、人目を忍んでこっそりと逢引きをしている場合は、その限りではない。とはいえ、この二年半、二人が逢引きをしたことはない。
「愛しいアイリ、陛下がお元気になられたら、私達の式の日取りを決めませんか?」
アルフレッドの言葉は、野心的な婚約者の言葉に聞こえ、アイリーンが恥じらう姿は端から見ると本物の恋人同士に見えた。
「フレド、でも、お兄様のお病気が治るまでは・・・・・・」
一見、愛を囁き合っている二人だったが、それぞれが注意しているのは、ラフカディオとアイゼンハイムの耳の動きだった。
二頭の耳がピンと立ち、方向を見極めて居る間は、愛を囁き続ける必要がある。理由は、枢密院のアイリーン派の大臣の一人であり、アイリーンとアルフレッドの婚約解消を望む一派の人間が近衛にも所属しているからで、アイリーンとアルフレッド不仲説は、そこから大臣の耳に入ったものと思われるので、近くに近衛兵が居る間は、可能な限り愛を囁き仲をアピールする必要があった。
二頭の耳から緊張が解れると、アルフレッドはスッとアイリーンの手を離した。
「失礼いたしました、アイリ」
「いいえ。謝る必要はありません」
近衛兵の気配が消えるなり、謝罪するアルフレッドにアイリーンの心が痛んだ。
アルフレッドが愛しているのはローズマリーで自分ではないと分かっているのに、改まって謝られると『本当はあなたの手など握りたくなかった』と言われているようで、アイリーンは寂しかった。
どんな悲しいことがあっても、いつも温かい腕でしっかりと抱きしめてくれた兄のウィリアムは、遠いタリアレーナの地で行方不明。思い出すとアイリーンは今にも涙が溢れ出してしまいそうだった。



