お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 アンドレに調べさせたパレマキアのダリウス王子の異常性癖、アイリーンから聞いた、婚姻に同意しなければ国王と王太子の処刑、並びにデロス国民をも手に掛け、海の女神の神殿を殺害したデロス国民の霊廟にすると脅して逃げ道を塞いだ上で婚姻を承諾させたこと。また、本来、王族の婚姻には、正式な婚約、それぞれの国のしきたりにのっとった婚約披露の祝宴等々を経て、イエロス・トポスの神殿に仕える巫女や神官のもとに、神より良き日のお告げをうけて婚儀が設定されるのに、パレマキリアはアイリーンの正式な婚約解消が整った、その三ヶ月後に婚儀を執り行うとしていること。
 六ヶ国同盟から申し入れているデロス不可侵の申し入れを完全に無視し、武力と脅しでデロスを併合しようとしていること。
 また、王太子が病の床にある事に加え、国王も病の床にあり、王位継承権第二位のアイリーンが独りで政、兄の世話、姫巫女としての務めを滞りなくこなしており、今後、万が一にも陛下が逝去されることや、王太子が王位の継承が困難になった場合、自動的に王位継承権を持つアイリーンを妻にした者がデロスの統治権を有することになること。また、王太子の病気はかなり重く、現状、戴冠する事は不可能に思える。そうなると、このままダリウス王子とアイリーンの婚姻を黙認すれば、棚からぼた餅式にパレマキリアはデロスを統治することができるようになり、いずれデロスは地図から消え、パレマキリアの一半島にされてしまう事になること。
 アイリーンの立場や、デロスの現状を考えるとすべてを手紙に認めることはリスクが大きいので、カルヴァドスは手紙を書く相手ごとに内容を少しずつ調整して書くことにした。
 しかし、父への手紙にだけは、カルヴァドスが知る限りすべての事実を書き記すことにした。
 当然、父は情報源を知りたがる。その時に、デロスの神殿に居るはずのアイリーンがタリアレーナにいるなどということが知れたら大変なので、カルヴァドスは先に情報源を明かさなくても済むように言葉を濁し、これは自分が王家に仕えるものから集めた情報を元にしており、長年にわたり、デロスの守護者たる地位を懇願していたエクソシアには動く好機であることを書き加えた。