(・・・・・・・・腹は括ったはずだ! 今更、怖じ気ずくなんて俺らしくない。俺はアイリーンを助けて、アイリーンの結婚を無効にするのが目的だ。エクソシアがパレマキリアとデロスの関係に口を出し、王太子と姫の結婚の白紙撤回を要求すれば、奴らは絶対に大人しく諦める。長い物には巻かれる主義だから。俺は動きそうな連中を焚きつけるだけだ・・・・・・・・)
カルヴァドスは気合いを入れるために自分の頬を両手の平でバシンと叩いた。
しかし、そばに控えていたメイドも、コンシェルジュの青年も、突然のことに飛び上がりそうに驚いた。
(・・・・・・・・ああ、こーゆうのが、貴族らしからぬ行動ってことか。気をつけないとな、何しろ、この十年、貴族らしいことをしたのは数える程度からな・・・・・・・・)
カルヴァドスは考えると、手紙を書き始めた。
下手な鉄砲も数撃てば当たるという理論を信じるほかはない。何しろ、親元を離れて以来、まともな貴族との付き合いはないし、面識のある貴族は皆無といっても過言ではない。ただ、それでも上級貴族であればカーライル公爵が誰かは知っている。取り敢えず、カーライル公爵としの立場を利用すれば、大抵の上級貴族は手紙を読まずに捨てることはないだろう。だが、手紙を読んだからと言って助けてくれるとは言えない。何某かでも、デロスの為に動いてくれるかどうかは別にして、少なくとも手紙の封を切って紙を開くまではしてくれる。それはカルヴァドスの力ではなく、家を出たカルヴァドスにカーライル公爵の地位を与えてくれた父の力だ。そこから先、最後まで読み、カルヴァドスの頼みを聞いてくれるかどうかは相手次第だし、カルヴァドスの手紙の内容にかかっているとも言える。
軍務大臣、外務大臣、皇帝の相談役、内大臣、思いつく限りの相手をカルヴァドスはリストしていった。そして、覚悟を決めると最後に父を加えた。
父に手紙を出せば、家に帰るかどうかを問われることは必然。今までのカルヴァドスであれば、あれこれ理由を付けて家に帰ることを拒んできた。だが、アイリーンとの結婚を本気で考えるならば、身分は高ければ高いにこした事はない。その為に腹もくくった。戻る条件は唯一つ、父が既に取り決めた三人との婚約の解消を認めてくれること。そして、カルヴァドスが心から愛しているアイリーンとの結婚を認めてくれるならば、カルヴァドスは今までの放蕩を謝罪し、父の元に戻る事を受け入れるつもりだった。
何しろ、アイリーンとは一夫一婦制でないと結婚できないのだから、三人の婚約者との婚約解消、その点だけは外せない。



