本当なら、船に居るときと同じラフな服に着替えたかったが、メイドは迷わず貴族らしい衣服を取り出し、頼んでも居ないのに、甲斐甲斐しくカルヴァドスの着替えを手伝った。
最後に、クラバットにつけるブローチを渡されたが、カルヴァドスは『今はつけない』と、断りリビングへと戻った。
やることは沢山あった。短時間に一人でも多く味方を付けなくてはならない。
エクソシアの精神の根底には、パレマキリアを併合し、我こそはデロスの保護者となり、六ヶ国同盟の中で珍しく一夫多妻であることを異端の宗教の影響を受けているのではと、揶揄されるのを止めたいという思いがあった。
デロスはいわば、イエロス・トポスの飛び地のような聖なる土地、その土地を守護する国は、同盟国の中でも発言権が強くなる。同じ大陸にないノティアソーラ王国の発言権は強い。海に散らばる百以上の島を統治する連邦は、海の覇権を司る大国とされているし、ボレイオス帝国はイエロス・トポスに国境を他のどの国よりも長く接しているから、自ずとイエロス・トポスの代弁者となる。この二国にエクソシアが勝るためには、デロスの保護者となる他はない。
出来れば、サッと因縁でも付けて攻め込んで平定してしまいたい国だが、パレマキリアの立ち回り方はまさに中間管理職さながらだ。弱いものには大きく出るが、強いものには巻かれる。だから、デロスに対して嫌がらせだ、軍事行動での圧力をかけるだのをして強さをひけらかすくせに、エクソシアに対しては腰が低く、毎年の貢ぎ物、上納金を納めるなど、ありとあらゆる手で皇帝のご機嫌とりに暇がない。それ故、無礼を働けば、すぐに平定してくれると言いながら、尻尾を出さないパレマキリアを狩ることができずに、エクソシアは何十年も苦汁を飲まされ続けていた。
そういう意味では、現在のデロスとパレマキリアの状態はエクソシアが介入するよい機会だった。
だが、婚約から逃げるためとは言え、親子喧嘩のあげく、家を飛び出したカルヴァドスが話をしたとして、父が耳を傾けてくれるとも思えなかった。
本当ならば、屋敷と所領も公爵の称号と一緒に押し付けられる所だったが、若かったカルヴァドスには屋敷などと言う、維持管理がめんどくさいものは迷惑で不要だったため、屋敷の代わりにこのホテルの部屋を定宿として使用する契約を結んだ。
「手紙を書く準備をしてくれ」
メイドに言うと、メイドはコンシェルジュの青年になにかを命じ、青年は部屋から走り出ていった。
暫くして戻ってきた青年は、木製の大きな文箱を仰々しくカルヴァドスの前において蓋を開けた。
中には、カーライル公爵家の紋章の透かしの入った便箋と封蝋、それに、カルヴァドスが好んで使うロイヤルブルーのインクと、中細の羽ペンが入っていた。
最後に、クラバットにつけるブローチを渡されたが、カルヴァドスは『今はつけない』と、断りリビングへと戻った。
やることは沢山あった。短時間に一人でも多く味方を付けなくてはならない。
エクソシアの精神の根底には、パレマキリアを併合し、我こそはデロスの保護者となり、六ヶ国同盟の中で珍しく一夫多妻であることを異端の宗教の影響を受けているのではと、揶揄されるのを止めたいという思いがあった。
デロスはいわば、イエロス・トポスの飛び地のような聖なる土地、その土地を守護する国は、同盟国の中でも発言権が強くなる。同じ大陸にないノティアソーラ王国の発言権は強い。海に散らばる百以上の島を統治する連邦は、海の覇権を司る大国とされているし、ボレイオス帝国はイエロス・トポスに国境を他のどの国よりも長く接しているから、自ずとイエロス・トポスの代弁者となる。この二国にエクソシアが勝るためには、デロスの保護者となる他はない。
出来れば、サッと因縁でも付けて攻め込んで平定してしまいたい国だが、パレマキリアの立ち回り方はまさに中間管理職さながらだ。弱いものには大きく出るが、強いものには巻かれる。だから、デロスに対して嫌がらせだ、軍事行動での圧力をかけるだのをして強さをひけらかすくせに、エクソシアに対しては腰が低く、毎年の貢ぎ物、上納金を納めるなど、ありとあらゆる手で皇帝のご機嫌とりに暇がない。それ故、無礼を働けば、すぐに平定してくれると言いながら、尻尾を出さないパレマキリアを狩ることができずに、エクソシアは何十年も苦汁を飲まされ続けていた。
そういう意味では、現在のデロスとパレマキリアの状態はエクソシアが介入するよい機会だった。
だが、婚約から逃げるためとは言え、親子喧嘩のあげく、家を飛び出したカルヴァドスが話をしたとして、父が耳を傾けてくれるとも思えなかった。
本当ならば、屋敷と所領も公爵の称号と一緒に押し付けられる所だったが、若かったカルヴァドスには屋敷などと言う、維持管理がめんどくさいものは迷惑で不要だったため、屋敷の代わりにこのホテルの部屋を定宿として使用する契約を結んだ。
「手紙を書く準備をしてくれ」
メイドに言うと、メイドはコンシェルジュの青年になにかを命じ、青年は部屋から走り出ていった。
暫くして戻ってきた青年は、木製の大きな文箱を仰々しくカルヴァドスの前において蓋を開けた。
中には、カーライル公爵家の紋章の透かしの入った便箋と封蝋、それに、カルヴァドスが好んで使うロイヤルブルーのインクと、中細の羽ペンが入っていた。



