お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

「どうした?」
「それが、その、只今、支配人が参ります」
 余りの怯えように、カルヴァドスは気になったが、食事が冷えるので、整えられた朝食に手をつけた。
 食べ始めたかと思うと、ノックの後、顔見知りの支配人が入ってきた。
「閣下、お食事のお邪魔を致しまして大変申し訳ございません」
 支配人は言うと頭を下げた。
「どうした?」
「こちらをご覧戴けますでしょうか?」
 支配人は言うと、デロス銅貨をテーブルの上に置いた。
「その、お連れ様から戴いたと申すのですが、このような法外な額のチップ、盗んだのではないかと・・・・・・」
 支配人は震えんばかりに緊張しながら報告した。
「それはない。彼女は、とても気前が良いだけだ。デロスから来たばかりで、通貨の交換レートを知らないんだ」
「左様でございましたか」
 支配人はホッとしたように息をついた。
「父上から、何か連絡は来ているか?」
「いえ、なにもお預かりしておりません」
「ならいい。コベントリーにくるように伝えてくれ」
 命令すると、支配人はコンシェルジュを専属として置いていった。
 貴族の生まれなら、使用人達の溢れる部屋でも平然と食事が出来るものだが、長い船での生活のせいで、給仕やコンシェルジュの少年から少し大人びたばかりの子供っぽさの残る青年の顔は、カルヴァドスにオスカーを思い出させ、カルヴァドスは思わずコンシェルジュのことを見つめてしまった。
 食事がすむと、給仕達は去っていくかと思いきや、支配人の命令らしく、追加でメイドが一人専属で残された。
 家族や恋人、仲間でもない人間が二人も部屋にいるのはカルヴァドスにとって非常に居心地が悪かった。

(・・・・・・・・でも、これに慣れて、昔みたいに平然と過ごせるようにならないと、オヤジと仲直りして元の暮らしには戻れないってことだよな・・・・・・・・)

 カルヴァドスは考えると、目で『早くお着替えを!』と、せっつくメイドに屈して着替える事にした。