お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

 パタパタと夜の見回りから戻ったラフカディオは、今日も主の寝室から出てこようとしないアイゼンハイムの元へと歩み寄った。
 アイリーンから留守番を言い渡されて依頼、アイゼンハイムは寝室を離れようとしない。昼間は居室まで出てくることはあっても、部屋にローズマリー以外が足を踏み入れようとすれば、手足を咬み千切らん勢いで襲いかかるので、王宮の奥の部屋でウィリアム王太子のフリをするのもラフカディオ独りで二倍暴れなくてはならなかった。
 アイゼンハイムにはアイゼンハイムなりの考えがあるようで、水は飲むものの、食べ物は必要最低限しか摂らない。時々、打ち合わせの為にコッソリとアルフレッドが姿を見せても護るべきアイリーンが不在なので目もくれなかった。
 一方、ラフカディオは、イエロス・トポスから贈られた聖なる狼であり、神殿に籠もることは出来ないが、日中はアイリーンと面会をするという名目でローズマリーに連れられて神殿に行き、暫く神殿の中を見回る。
 万が一、怪しいものが居れば、即捕らえてアルフレッドに引き渡し、夕方には王宮に戻り、暴れるウィリアム王太子の役をこなし、夕食の頃にアイリーンの私室へと戻ってくるのが日課だった。
 アイリーンが居るときは常に行動を共にしていた二匹だったが、主不在は二匹の立ち位置を大きく変えた。
 あくまでも、アイゼンハイムは主と主の部屋に拠点を構える生活だったが、ラフカディオは拠点を神殿に移し、アイリーンが神殿にいると信じさせる重要な役を担っていた。
 夜になり、休むときの場所取りも大きく変わった。
 アイリーンがいるときは、アイゼンハイムは寝室の窓側、ラフカディオは寝室のドアー前と言っても、寝室内に留まっての警護だったが、主不在の今、ラフカディオは寝室ではなく、居室も守る必要があり、寝室はアイゼンハイムにまかせ、自分は居室の窓が見渡せる廊下側扉の前に陣取るようになっていた。