お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

「アイリ?」
 考え込んだアイリーンにカルヴァドスが声をかけた。
「カルヴァドスさん、本当にありがとうございます。なんとお礼を言って良いのか・・・・・・」
「アイリ、お礼は要らない。でも、アイリは俺に隠してることがあるだろ?」
 カルヴァドスの言葉にアイリーンはドキリとした。
「最初は、婚約者から逃げて好きな男のところに行くと言ったのに、実はとっくに連絡が途絶えていて、きっと他の女性が出来たのだろうから逢って別れを告げたたいだけだって。そうしたら国に帰って婚約者と結婚する・・・・・・。もし最初から、好きだった男に別れを告げて、婚約者と結婚するつもりだったのだとしたら、アイリには国に帰らなくちゃならない期限が有るんじゃないのか?」
 探す相手のことを詰問されるのだと思っていたアイリーンは、質問が期限であったことにホッと胸をなで下ろしそうになった。
「期限は、いつまでか教えてくれるか?」

(・・・・・・・・どうしよう、ここで半年と告げてしまったら、私がデロスの王女と答えたも同じになってしまう。でも、海の旅に詳しいカルヴァドスさんにアドバイスを貰わないと、期限までに帰国できなくなるかも知れない。万が一、そんな事になったら、私もお兄様も、帰る国を喪くしてしまう・・・・・・・・)

 アイリーンは覚悟を決めると、重い口を開いた。
「半年です」
「半年? それって・・・・・・」
 カルヴァドスはあまりに素直にアイリーンが答えたことに、どこから答えを導き出すべきか逆に躊躇した。
「私の婚約者は、姫様の婚約者である、パレマキリアのダリウス殿下の側近に当たる方だと聞いています」
 想定外の答えにカルヴァドスが目を瞬いた。
「なんで、アイリがそんな奴と結婚しないといけないんだ?」
「姫様がパレマキリアに嫁ぐに当たって、独りだけ侍女を連れて行って良い事になったんです。でも、姫様の乳姉妹のマリーさんは、恋人が国にいて、結婚の約束もしているので、パレマキリアへは同行できないので、婚約者の居ない私が選ばれたんです。でも、そうしたら、侍女の私が姫様の国外逃亡を助けることがないようにと、私もダリウス殿下の側近のパレマキリアの貴族に嫁ぐようにと・・・・・・。ですから、姫様が神殿を出られる半年後には、国に帰って姫様をお迎えし、三ヶ月後の挙式の準備をしなくては無らないんです」
 アイリーンが三ヶ月後に挙式と言うと、カルヴァドスがアイリーンの肩を掴んだ。
「きゃっ!」
 痛みと驚きでアイリーンが声をあげた。
「いま、なんと言った? いつ挙式だって?」
 カルヴァドスは真っすぐにアイリーンの目を見つめて問いかけた。
「姫様が神殿を出られたら、三ヶ月後に挙式です」
「おかしいだろ! 普通、王族なら婚約して、それからお披露目だの何だのに半年はかかって、そこから挙式となると早くても一年はかかるはずだ。デロスでは違うのか? エクソシアでは、それが普通だぞ」
 カルヴァドスの言うことは正しい。普通、デロスでも王族の結婚にはあらゆる手続きや式典が伴うので、婚約してから最低でも一年はかかる。それに、もし、王太子であるウィリアムが結婚するとなれば、イエロス・トポスから長老を招き、結婚の許可を取る必要があるので、更に半年は必要になる。
「ダリウス殿下が、姫が理由を付けて婚姻を先延ばしにして、六ヶ国同盟に結婚を邪魔されることがないようにと、現在の婚約が解消になる半年後にダリウス殿下との婚約が即日成立するものとして、三ヶ月後に輿入れすることを約束させられたときいています」
 アイリーンは、必死に他人事のように説明した。