お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!


 食後、部屋に戻ったアイリーンは、カルヴァドスにタリアレーナまでの行程を教えて貰った。
 デロスからパレマキリアまでは北上し、途中からはパレマキリアの断崖を見ながら進んだ船は、港を離れると一気に海岸線から離れた。
 そのまま、陸沿いに行くものと思っていたアイリーンは、再び海の真ん中に戻ってしまったことに少なからず不安を抱いて居たが、皆があまりに自然にふるまっていたので、流石にアイリーンもそれが当然なのだろうと受け止めてきたのだが、せっかくの機会なのでカルヴァドスに尋ねてみることにしたのだった。

「ああ、それは、パレマキリアとエクソシアの国境辺りには岩礁と、エクソシアの遠浅の海岸線が有るから、船底を擦らないように一旦かなり沖まで出ないといけないんだ。そうしないと、座礁したり、干潮時に船が立ち往生して満潮まで動けなくなることがあるからなんだ。それで、船長と話して、沖へ出るなら、もっとエクソシアの中心に近い港に入って、二泊ほど停まり、その後一気にタリアレーナを目指す方が良いだろうって事になったんだ」
 カルヴァドスの話を聞いていると、本来の貨物船としての業務を完全に無視して、船自体がアイリーンの為だけにタリアレーナに向かっているように聞こえた。
「俺としては、一日でも長くアイリと一緒にいたいから。ゆっくりエクソシアの港巡りでもしたいところなんだが、アイリはタリアレーナで用事があるから急いで行きたいって言ってたから、俺が船長に勝手に掛け合って、途中、寄るのをやめた港行の荷物は、全部エクソシアで別の船に振り分けることにした」
 カルヴァドスの言葉に、アイリーンは心配げにカルヴァドスを見つめた。
「そんな事をして大丈夫なんですか?」
 アイリーンの問いに、カルヴァドスは笑顔で答えた。
「ああ、大丈夫だよ。アイリは海に詳しくないから分からないと思うが、実は、この辺りは東に進む方が西に進むのより時間がかかるんだ。もちろん、その時々で風の強さや、海流もある。だから、デロスからタリアレーナを目指す場合、客船だとおおよそ三ヶ月の行程になる」
 三ヶ月という言葉に、アイリーンが蒼褪めた。
「でも、この船なら、遅くても二ヶ月ちょっとで着ける。まあ、荷物を全部おろして物資だけにすれば、一ヶ月半ちょいで着けるが、既に荷物を積んでるから、そこまで早くはならない。逆に、帰りは、タリアレーナからデロスまで、客船でも二ヶ月だ。この船なら、飛ばせば一ヶ月ちょい。客船は乗り心地重視だし、あちこちに寄るからな。だから、エクソシアで客船に乗り換えたら、そこからタリアレーナまで軽く一ヶ月はかかると考えた方がいい」
 カルヴァドスの説明に、アイリーンは自分の考えの甘さに俯いた。

(・・・・・・・・知らなかった。そんなにタリアレーナが遠いなんて。確かに陸を馬車で旅するとなると、半年近くかかるとは聞いたことがある。でも、片道だけで三ヶ月だなんて、帰りが二ヶ月としても、もし、私が客船に乗っていたら、とても、お兄様を探す時間なんて無かったんだ。しかも、私のためにカルヴァドスさんは、仕事を犠牲にして、最短でタリアレーナに着けるようにしてくれたんだ・・・・・・・・)