お転婆姫は命がけ。兄を訪ねて三千里!

「お待たせしました。もう、着替え終わりました」
 アイリーンに声をかけられ、振り向いたカルヴァドスは、アイリーンに下半身で物を考えるふしだらな男というレッテルを貼られる危機を回避し、豪快にシャツを脱ぎ捨て、自分の寝間着を羽織ってからトラウザーを脱いだ。

 貴族の娘のアイリーンは、真っ白な長い寝間着の下に、ふんわりと膨らんだトラウザーのようなペチコートを履いているので、どんなに寝乱れても脚や素肌が見えることはない。それに比べてカルヴァドスの方は、ほぼ同じ作りの生成の長いシャツのようなパジャマだけなので、当然、寝乱れれば、裸同然になるリスクがある。
 更に言えば、アイリーンのパジャマシャツは長袖の上、全部ボタンがピッチリと止められているが、カルヴァドスのシャツは半袖で、寝苦しいのが嫌いなカルヴァドスは三番目までボタンを外していて、アイリーンに半裸に近いと言われても否定しきれない姿だった。

「あ、ボタン、締めた方がいいか?」
 改めてカルヴァドスに問われ、アイリーンはまじまじと悩ましくも半裸に近いカルヴァドスの姿を見つめてしまった。

(・・・・・・・・あの逞しい胸に、腕に、いつも私は抱きしめられているのね・・・・・・・・)

 アルフレッドと兄のウィリアムが剣の練習をした後の着替えも手伝ったことのあるアイリーンだったが、今まで一度もアルフレッド姿でさえ、それを異性の体として認識したことがなかったのに、カルヴァドスの逞しい体が眩しいようで、アイリーンは恥ずかしくなって頬を染めて俯いてしまった。
 そのアイリーンの恥じらう様子に、カルヴァドスは慌ててボタンを留めた。
「アイリに身の危険を感じさせるような格好ではそばに近付きたくないからな・・・・・・」
 カルヴァドスは言うと、ゆっくりとベッドに戻り、アイリーンを抱きしめた。
 素肌の上にパジャマを着ただけのアイリーンの体は柔らかく、骨格も肉付きも良いエクソシアの娘よりも細く、気持ち胸が少し小さく感じるのは、アイリーンが純粋なイエロス・トポスの血を引く王女であることを意味していた。

 イエロス・トポスの民は男性も女性も骨格が細く、豊満な肉体美を持ち合わせる女性は皆無に等しい。
 それでも、愛する女性がパジャマ一枚で腕の中にいる状況は、カルヴァドスの体に生理的反応を引き起こすのに十分だった。