さっき扉を開けた時、必要以上にアイリーンを怯えさせたので、カルヴァドスはノックをする前に扉の外から『姫さん、俺だけど、ドアー開けるぜ』と声をかけてからドアーを開けた。
アイリーンは壁により掛かり、体を丸めるようにして座っていた。
「もうすぐ補給が終わるから出航する。そうしたら、嫌な国とも婚約者ともお別れだ」
カルヴァドスが言うと、アイリーンは蒼い顔に少しだけ笑みを浮かべた。
(・・・・・・・・いっそ言ってしまいたい。本当は、姫さんが本物のアイリーン王女だと知っていることを・・・・・・。その上で、どんな理由があって、タリアレーナに行かないといけないのかを話して貰いたい。その上で、愛を誓いあえたら、俺は全てを捨てても構わない・・・・・・・・)
カルヴァドスは思ったが、そのことは口に出さなかった。
「ご用は終わったのですか?」
「ああ、用って程のものじゃない。ちょっと、酒場のツケの支払いを忘れてたんで、取り立てが来ただけだ。それも、もう払ったし、もう、この港には用はない」
カルヴァドスは言いながら、ヒステリックなフランチェスカの声が部屋まで届いていなかったことに胸をなでおろした。
「出発まで、一緒にいようか?」
カルヴァドスの言葉に、アイリーンの瞳に感情が戻った。
「でも、お仕事は?」
「もう、休憩時間だ・・・・・・」
カルヴァドスは言うと、ベッドの上に上がり、アイリーンを抱き寄せた。
「体が冷たいな」
恐怖で血行が悪くなり、体温が下がって居るのだと、カルヴァドスは理解した。
「なんだか、一人だと寒くて・・・・・・」
デロスに比べると、パレマキリアの港はどこもそれなりに北に位置する。そう言う意味では、確かに気温も少し低いが、寒いと言うほどの温度ではない。
「暖かい・・・・・・」
カルヴァドスのぬくもりを感じてアイリーンが呟いた。
「俺がそばにいるから、楽しいことだけを考えようぜ。次の港は、エクソシアだから、思いっきり羽を伸ばそう」
優しく語りかけるカルヴァドスの声に耳を傾け、カルヴァドスの腕の中でアイリーンは静かな寝息をたてはじめた。
(・・・・・・・・姫さん、早朝にパレマキリアに入港するって聞いてから、夕べは多分、一睡もしていない。だとしたら、このまま、出航まで休ませてやろう・・・・・・・・)
カルヴァドスは腕の中で眠るアイリーンを愛しげに見つめた。
あまりに愛しくて、思わずその唇に口付けてしまいたくなるのを必死に堪え、カルヴァドスは優しいキスをアイリーンの額に何度か落とした。
(・・・・・・・・絶対に、この怯え方はまともじゃない。姫さんは、絶対に渡さない。差し違えたって、奴には渡さない・・・・・・・・)
カルヴァドスは考えながら、アイリーンを抱く腕に力を込めた。
しばらくすると、船が回頭する気配があり、すぐに『出航』の声がかかった。
本来なら、一等航海士であるカルヴァドスは操舵室に詰めるべきところだが、既に次の港までの海図に線は引いてあるし、それこそ、家に帰るのに案内は要らないと、操舵手が言うくらい、何度も通った国への航路だから、カルヴァドスがいなくても何の問題もなかった。
それに、先日、アイリーンと想いが通じたカルヴァドスの幸せな様子に、クルー達は口々に、とうとうカルヴァドスの想いが通じてアイリーンが想いを受け入れたとめでたい話で盛り上がっていた。
そこへきて、今日のフランチェスカとの決別と手切れ金を渡す姿を目撃したものは、手が空くなり、仲間にカルヴァドスの怒りの凄まじさを話して聞かせ、船の中はある種のお祭りムードになっていた。
そんな事を知らないカルヴァドスは、しばらくアイリーンに付き添っていたが、アイリーンの眠りが深く安定したのを確認すると、ベッドに横たえ、しっかり羽布団をかけて自室を後にした。
出航してすぐ、サロンでお昼が提供されたが、カルヴァドスは敢えてアイリーンを起こさなかった。
☆☆☆
アイリーンは壁により掛かり、体を丸めるようにして座っていた。
「もうすぐ補給が終わるから出航する。そうしたら、嫌な国とも婚約者ともお別れだ」
カルヴァドスが言うと、アイリーンは蒼い顔に少しだけ笑みを浮かべた。
(・・・・・・・・いっそ言ってしまいたい。本当は、姫さんが本物のアイリーン王女だと知っていることを・・・・・・。その上で、どんな理由があって、タリアレーナに行かないといけないのかを話して貰いたい。その上で、愛を誓いあえたら、俺は全てを捨てても構わない・・・・・・・・)
カルヴァドスは思ったが、そのことは口に出さなかった。
「ご用は終わったのですか?」
「ああ、用って程のものじゃない。ちょっと、酒場のツケの支払いを忘れてたんで、取り立てが来ただけだ。それも、もう払ったし、もう、この港には用はない」
カルヴァドスは言いながら、ヒステリックなフランチェスカの声が部屋まで届いていなかったことに胸をなでおろした。
「出発まで、一緒にいようか?」
カルヴァドスの言葉に、アイリーンの瞳に感情が戻った。
「でも、お仕事は?」
「もう、休憩時間だ・・・・・・」
カルヴァドスは言うと、ベッドの上に上がり、アイリーンを抱き寄せた。
「体が冷たいな」
恐怖で血行が悪くなり、体温が下がって居るのだと、カルヴァドスは理解した。
「なんだか、一人だと寒くて・・・・・・」
デロスに比べると、パレマキリアの港はどこもそれなりに北に位置する。そう言う意味では、確かに気温も少し低いが、寒いと言うほどの温度ではない。
「暖かい・・・・・・」
カルヴァドスのぬくもりを感じてアイリーンが呟いた。
「俺がそばにいるから、楽しいことだけを考えようぜ。次の港は、エクソシアだから、思いっきり羽を伸ばそう」
優しく語りかけるカルヴァドスの声に耳を傾け、カルヴァドスの腕の中でアイリーンは静かな寝息をたてはじめた。
(・・・・・・・・姫さん、早朝にパレマキリアに入港するって聞いてから、夕べは多分、一睡もしていない。だとしたら、このまま、出航まで休ませてやろう・・・・・・・・)
カルヴァドスは腕の中で眠るアイリーンを愛しげに見つめた。
あまりに愛しくて、思わずその唇に口付けてしまいたくなるのを必死に堪え、カルヴァドスは優しいキスをアイリーンの額に何度か落とした。
(・・・・・・・・絶対に、この怯え方はまともじゃない。姫さんは、絶対に渡さない。差し違えたって、奴には渡さない・・・・・・・・)
カルヴァドスは考えながら、アイリーンを抱く腕に力を込めた。
しばらくすると、船が回頭する気配があり、すぐに『出航』の声がかかった。
本来なら、一等航海士であるカルヴァドスは操舵室に詰めるべきところだが、既に次の港までの海図に線は引いてあるし、それこそ、家に帰るのに案内は要らないと、操舵手が言うくらい、何度も通った国への航路だから、カルヴァドスがいなくても何の問題もなかった。
それに、先日、アイリーンと想いが通じたカルヴァドスの幸せな様子に、クルー達は口々に、とうとうカルヴァドスの想いが通じてアイリーンが想いを受け入れたとめでたい話で盛り上がっていた。
そこへきて、今日のフランチェスカとの決別と手切れ金を渡す姿を目撃したものは、手が空くなり、仲間にカルヴァドスの怒りの凄まじさを話して聞かせ、船の中はある種のお祭りムードになっていた。
そんな事を知らないカルヴァドスは、しばらくアイリーンに付き添っていたが、アイリーンの眠りが深く安定したのを確認すると、ベッドに横たえ、しっかり羽布団をかけて自室を後にした。
出航してすぐ、サロンでお昼が提供されたが、カルヴァドスは敢えてアイリーンを起こさなかった。
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