上京し、キャンパスライフを謳歌していた私は、もうじき大学生になって初めての夏休みを目前に…言い方を変えれば、初めての試験期間に入った。

試験勉強をしていた真夜中に、珍しく姉から電話があった。

「お姉ちゃん、珍しいね。どうしたの?」

「菜摘は聞いてない?おばあちゃんが亡くなったって」

私は、一体何のことかわからずに思考が停止した。

「菜摘?」

「おばあちゃんが…?」

「うん。明後日、葬式だって」

カレンダーを見ると、明後日はよりによって、必修のフランス語の試験日だった。

どうしていいのかわからない…。

親からは

「万一、留年なんかしたら、即、退学させる」

入学当初からしつこく念押しされていた。

だから、両親は私に、おばあちゃんの体がだいぶん悪いということも知らせなかったのではなかろうか。