いきなりラインハルト隊の先頭車両が轟音とともに跳ね上がった。爆発、炎上する。

「戦車長殿!敵の攻撃です!」
「ああ。言われなくもわかる」双眼鏡から目を離さず、吐き捨てるようにオットーは部下に言う。また砲撃音、今度は二両目の四号戦車が火を噴いた。同時にラインハルトのティーガーが反撃を開始した。56口径8.8㎝KwK36戦車砲が吠える。遅れて他の戦車も反撃を開始する。砲撃しつつ正面を向いたままゆっくりと後退しはじめる。

 そろそろか。いい加減で援護射撃を開始しないと変に思われるだろうな。敵の攻撃で奴が死んでくれたら万々歳だが、そう簡単にはいくまい。オットーの舌打ちは誰も聞いていなかった。それどころではなかったからだ。

「オットー小隊砲撃用意。照準、前方1時。茂みに敵の対戦車砲が隠れている」
「了解!」

 無線で部下へ指示を下す。その目にはもはや迷いはない。

「Feuer!(撃て)」