「ん」双眼鏡を持つオットーの手に力が入る。何か見えた気がした。どこかで何かがかすかに動いた。異変を認めたのはラインハルトの小隊が向かう先の小高い丘だ。そちら側は我が軍の制圧目標なのだから味方がいるはずはない。敵に決まっている。

 しかしオットーは動かない。額に双眼鏡を当てたままただ見ている。その唇には薄い笑いが浮かんでいる。黒い髪と黒い瞳、そして浅黒い肌のオットーは、金髪で碧眼のラインハルトとは全くタイプが違っていた。彫りの深い引き締まった顔のラインと、すらっと背の高いのは共通していたが、似ているのはそれだけだ。