そんな風にヒルダにとって優しいお兄ちゃんだったオットーは、しかしラインハルトが現れてからまるで別人のように変わってしまった。

 よく笑う明るい性格の少年は昏い目をした寡黙な青年になった。やがて自ら希望して親衛隊へ入団した。そしてそこで短期間のあいだに次々に殊勲を立ててのし上がっていった。今の階級は少尉だと聞いている。ヒルダにもあまり会いに来てくれなくなった。忙しいせいかもしれないが、せっかく会っても喋るのは彼女ばかりで彼はほどんと喋らない。ヒルダにはオットーが何を考えているのかわからなかったが、彼女はその昏い目の奥に何かを感じた。外へ出ないように抑えてはいる。秘めた感情のゆらめきのようなもの。

 オットーはラインハルトのヒルダへの熱い思いを知っているはずだ。なのになぜ何も言ってくれないのか、わたしがラインハルトに取られてもいいのかな、わたしのことなど何とも思っていないのかなと寂しく感じていた。