瓦礫のあいだでうずくまっている彼を憲兵が捕えた。彼は抵抗しなかった。オットーは軍法会議にかけられた。罪状は脱走と味方の殺害。部下を撃ち殺したのを知られたらしい。

 目の前にずらっと並んだ銃殺隊の前で、最期の瞬間に、彼はあの日のことを思い出していた。

 川に落ちた小さなヒルダ。ずぶぬれの彼女へ、僕が守ると約束した。ヒルダは、いつかお兄ちゃんのお嫁さんになるって言ってくれた。

 僕は、すぐ近くに君がいたのに、君の気持ちは変わってなどいなかったのに、ずいぶん遠回りして、取り返しのつかない馬鹿なことをした。

 ヒルダ。ごめんね。お兄ちゃんはきみを守ってやれなかったよ。

Auf Wiedersehen. dir mein Schatz.