呆然としているオットーの横で、部下が物言わぬラインハルトの手から小さな箱をもぎ取った。蓋を開け、中を見て歓声を上げる。

「おお。すげえ。ダイヤか。ダイヤの指輪だ」

 やめろ。

「何カラットあるんだ。さすが貴族様だな。売ったらその金で一生遊んで暮らせそうだ」

 やめろ。やめるんだ。

「少尉殿。山分けにしませんか?それとも・・・」
「やめろ!」
「ここで死ねや!」

 部下が腰で小銃を構えた。と同時に二丁の銃が火を噴く。倒れたのは部下だ。額の真ん中を撃ち抜かれていた。死んだ部下の小銃が放った弾はオットーの肩をかすめただけだ。