こいつ、と内心の怒りを隠し平静を装うが、腹の中は煮えくりかえっていた。だから少佐が「十日後のヒルダの誕生日に、私は彼女に結婚を申し込む。本部からは休暇をもらっていてね。ベルリンへ戻りヒルダに会うんだ。婚礼には是非ともきみも招待したい」と言った時には、思わず腰のワルサー拳銃に手を伸ばしかけた。そんなオットーに気づくことなくラインハルトは続ける。

「親しいきみから祝ってもらったらさぞかしヒルダも喜ぶだろう」
「・・・」
「私たちの結婚に反対してい父をやっと説得できてね」
「くっ」
「ん。どうかしたのかね」

 オットーの様子が変だとやっと気づいたらしい。ラインハルトが訝し気に聞いてくる。歯を食いしばり「なんでもありません」とやっとの思いでオットーは返事を絞り出した。