“So hold me tight, tonight, tonight
(だから僕を強く抱きしめてよ、今夜は)
It's you, you, you, you
(君だよ 君だけなんだ)”
と歌いながら、観客ひとりひとりに視線を送る。女性客たちは彼と目が合うと興奮気味にキャッキャ騒いでいる。
“It's you, you, you, you... ”
高崎さんは、遂に最後まで歌い上げてしまう。最後の“ you ”のところで私に視線を向け、ニッコリ微笑んで首を傾げた。その仕草に、正直なところドキドキしてしまい、一瞬にして顔が火照り出すのが分かった。大きな拍手と同時に、黄色い悲鳴が上がった。
私でなくても、こんなことされたら誰だってドキドキしてしまうだろう。なんという曲を最後にリクエストしてしまったのだろうか。私は拍手をするのも忘れて彼の挙動を目で追っていた。
「演奏はこれで終わりね〜。今日も新しい雑貨入ったから見てってください〜」
彼はそう言いながらギターをケースにしまい始めた。客たちは残念そうにため息を漏らして店内に散り散りになった。
「あの、演奏ありがとうございました」
「暇なときは時々弾くんだよ。またタイミングが合えば弾くよ、莉緒ちゃんのために」
さっきから私はこの人のせいで心が穏やかではない。
「どうしたの?顔真っ赤だよ」
彼は私の顔を覗き込んで笑っている。分かってやっているんだったらこの人は本当に悪い人だ。
「高崎さん、さっきからずるくないですか?」
私は完全に弄ばれている。彼は「くくくっ」と喉の奥で意地悪く笑った。
その日、私は高崎さんの演奏だけで気持ちがいっぱいになってしまい、何も見ることなく店を出てしまった。
「また来てね」とニコニコ微笑み手を振る高崎さんに、不覚にも胸がキュンとしてしまう。この日から、高崎さんがただのアンティークショップの店主には見えなくなってしまった。
(だから僕を強く抱きしめてよ、今夜は)
It's you, you, you, you
(君だよ 君だけなんだ)”
と歌いながら、観客ひとりひとりに視線を送る。女性客たちは彼と目が合うと興奮気味にキャッキャ騒いでいる。
“It's you, you, you, you... ”
高崎さんは、遂に最後まで歌い上げてしまう。最後の“ you ”のところで私に視線を向け、ニッコリ微笑んで首を傾げた。その仕草に、正直なところドキドキしてしまい、一瞬にして顔が火照り出すのが分かった。大きな拍手と同時に、黄色い悲鳴が上がった。
私でなくても、こんなことされたら誰だってドキドキしてしまうだろう。なんという曲を最後にリクエストしてしまったのだろうか。私は拍手をするのも忘れて彼の挙動を目で追っていた。
「演奏はこれで終わりね〜。今日も新しい雑貨入ったから見てってください〜」
彼はそう言いながらギターをケースにしまい始めた。客たちは残念そうにため息を漏らして店内に散り散りになった。
「あの、演奏ありがとうございました」
「暇なときは時々弾くんだよ。またタイミングが合えば弾くよ、莉緒ちゃんのために」
さっきから私はこの人のせいで心が穏やかではない。
「どうしたの?顔真っ赤だよ」
彼は私の顔を覗き込んで笑っている。分かってやっているんだったらこの人は本当に悪い人だ。
「高崎さん、さっきからずるくないですか?」
私は完全に弄ばれている。彼は「くくくっ」と喉の奥で意地悪く笑った。
その日、私は高崎さんの演奏だけで気持ちがいっぱいになってしまい、何も見ることなく店を出てしまった。
「また来てね」とニコニコ微笑み手を振る高崎さんに、不覚にも胸がキュンとしてしまう。この日から、高崎さんがただのアンティークショップの店主には見えなくなってしまった。


