Hold Me Tight

「適当なのにその再現度はすごすぎます!じゃあ、レディ・マドンナできますか?」

「できるよー」

 リクエストはしたものの、原曲はピアノ伴奏だけどギターで再現できるのかな?と思ったが、そんな心配は無用だった。伴奏を完璧に編曲している。ギターも歌もうまい。そしてさらりとギターも歌もやりこなす姿はめちゃくちゃかっこいい。

演奏する彼の横顔を見つめていると、左耳の耳たぶに小さな粒のピアスが2つついているのがちらりと見えた。骨董屋の店主がピアス?と頭の片隅でそのギャップを感じつつ、小さな発見に少しだけ嬉しくなった。

「じゃあ、ノーウェアマンは?」

「OK。じゃあハモってよ。僕、コーラスやるからメロディー歌ってね。1コーラスね」

「へっ!?」

 突然の振りに少し出遅れたが、好きな曲なのですんなり乗れた。

「ハモれた〜めっちゃ気持ちいい!」

 その後も数曲リクエストして、すべて再現してくれた。私も時々気持ちよくハモらせてもらった。

 そうこうしているうちにボチボチ客が入ってきたので、リクエストはラストとなった。

「最後は〜じゃあ…ホールド・ミー・タイトでお願いします!」

「ほぅ〜。では手拍子お願いします」

 私が手拍子を始めると、いつの間にか来店した客たちも私たちのまわりに集まっていて、私と一緒に手拍子をしていた。完全に高崎さんの独擅場、ストリートライブさながらの演奏で、高崎さんもノリノリだ。私も手拍子しながら小さな声で歌詞を口ずさみ、合いの手を入れる。