Hold Me Tight

 客席の方をキョロキョロと見渡すと、観客の中には個性豊かな装いの人もかなり多い。ライブTシャツを着ている人はもちろん多いし、ピンクゴールドや茶髪の長髪を巻いている人をよく見る。おそらくメンバーのひとりにそんな髪型の人がいるのだろう。髪型どころか服装も派手なハードロック調の人もいる。何より、最前列にはチャイナドレスを着た2人組の若い女性たちが一番目立っている。

高崎さんの所属しているバンドはどんなバンドなのか?高崎さんもこんなロックな服を着るのか?

お店で見る高崎さんの雰囲気からは想像できない。

 いよいよ開演時間だ。開演のアナウンスが流れると同時に、どこからともなく手拍子が沸き起こる。ステージはスモークで覆われて緑色の照明が中央を照らし出し、3人のシルエットが浮かび上がった。手拍子は拍手と歓声に変わり、観客たちは一斉に立ち上がる。メンバーの登場で会場は一気に興奮に包まれた。左に髭とサングラスで強面風のスーツの人が立ち、右に長髪巻き毛でスパンコールのド派手な衣装を着た人が立ち、真ん中にスーツ姿の高崎さんが立った。

高崎さんがゴリゴリのロック衣装や巻き毛の人みたいな衣装でなくて安心した。左耳にはクロスのロングピアスが揺れている。

それにしても、高崎さんはギターを弾くだけじゃなくて歌も歌ってパーカッションもするの?器用すぎではないか?

 そして始まったオープニングナンバー。てっきり真ん中の高崎さんがメインボーカルを務めるのかと思ったら、歌い出したのは左の人だったので驚いた。見た目に似つかわず、と言ったら失礼かもしれないが、艶やかで伸びのある優しい歌声に惹きつけられた。ロックだがしっとりとした曲調だ。高崎さんと右の人のコーラスも美しい。観客たちは、手拍子だけでなく拳を上げるのがデフォルトらしい。グッズのマラカスライトを振っている人もいる。私も見よう見まねで拳を上げてみたらなんだか楽しくなってきた。

1曲目が終わったと思ったらすぐにドラムの音が鳴り響き、アップテンポの2曲目が始まった。スイッチボーカルというのか、3人が代わる代わるボーカルを取った。なるほど、このバンドは3人全員がメインボーカルを取れるのか。