それにしても、高崎さんをお目当てにしているような女性客が多いのは気のせいだろうか。そもそも客層は女性が多いように思う。それに、ギターの弾き語りをする骨董屋があんなに女性にキャーキャー言われるのが不思議でならない。
たしかに、素人目だが彼のギターも歌もうまかったし、そのパフォーマンスは見ている者を魅了するとも言える。というかその場にいるみんなを虜にした。いったい、彼は何者なのか。
そう言えば、こんなことがあった。いつの日かの会社帰り、ひとりで新しく入荷したというアクセサリーを物色していると、ある女性客が川原さんに尋ねる声が聞こえた。
「今日は高崎さんいらっしゃらないんですか?」
「あー今日はいないですよ」
「次はいつ来られますか?」
「さあ。ここんところ忙しいみたいなんで」
「そうですか…。今ツアー中ですもんね」
「ええ。そういうことです」
「分かりました…」
彼女はいかにも残念そうな顔で店を出て行った。
ツアー中、とは?
私は気になって川原さんに聞いた。
「川原さん、ツアー中ってなんですか?高崎さんは骨董の行商でもしてるんですか?」
「え。ぶふっ」
いつも仏頂面の川原さんが突然噴き出した。
「私、何か変なこと言いました?」
「市川さんは知らないんだ?」
「何をですか?」
「いや、なんでもないです。知らないなら知らないで」
「もったいぶらないで教えてください」
「高崎さんに直接聞けばいいんじゃないですか?」
「高崎さん、いつ来るか分からないのに…」
私は不服に感じながらも、川原さんはそれ以上答えてはくれなそうだったので諦めた。
たしかに、素人目だが彼のギターも歌もうまかったし、そのパフォーマンスは見ている者を魅了するとも言える。というかその場にいるみんなを虜にした。いったい、彼は何者なのか。
そう言えば、こんなことがあった。いつの日かの会社帰り、ひとりで新しく入荷したというアクセサリーを物色していると、ある女性客が川原さんに尋ねる声が聞こえた。
「今日は高崎さんいらっしゃらないんですか?」
「あー今日はいないですよ」
「次はいつ来られますか?」
「さあ。ここんところ忙しいみたいなんで」
「そうですか…。今ツアー中ですもんね」
「ええ。そういうことです」
「分かりました…」
彼女はいかにも残念そうな顔で店を出て行った。
ツアー中、とは?
私は気になって川原さんに聞いた。
「川原さん、ツアー中ってなんですか?高崎さんは骨董の行商でもしてるんですか?」
「え。ぶふっ」
いつも仏頂面の川原さんが突然噴き出した。
「私、何か変なこと言いました?」
「市川さんは知らないんだ?」
「何をですか?」
「いや、なんでもないです。知らないなら知らないで」
「もったいぶらないで教えてください」
「高崎さんに直接聞けばいいんじゃないですか?」
「高崎さん、いつ来るか分からないのに…」
私は不服に感じながらも、川原さんはそれ以上答えてはくれなそうだったので諦めた。


