スマホのライトを照らしてくれる橋本さんは、私を見つけてくれる。
「大丈夫ですか、時枝さん」
「……私、怖い、です」
「大丈夫です。きっと動きますよ」
橋本さんは優しく、私に声をかけてくれる。
「橋本、さん……私、暗い所が、怖くて……」
橋本さんの表情はあまり変わらない。
「……そうだったんですか」
私はしゃがみこんだまま、動けずにいた。
「時枝さん、ここから動いてはダメですよ」
立ち上がる橋本さんは、エレベーターにある非常ボタンを押し、何やら会話を始めている。
私は恐怖に苛(さいな)まれ、その場にうずくまるしかなかった。
「……時枝さん、しばらくここから出られないようです」
「え……?」
ここから、しばらく出られない……。
「そんな……」
「話によると、エレベーターの部品の一部に欠損が見つかったようです。それを取り替えるのを、この前の点検で忘れてしまったようで、恐らくその部品が破損してしまい、動けなくなったそうです」
ぶ、部品の一部に欠損……!? 取り替えるのを忘れた……?!
「明日、その部品を交換予定だったそうなのですが……。交換する前に、どうやら破損してしまったようですね」



