「おはようございます」

「おはようございます。今日もご苦労様です」

「ありがとうございます」

 主人公の私、時枝(ときえだ)結麻(ゆま)は、とある食品会社の本社ビルにて、清掃スタッフとして働いている。 
 働いてもう一年ほどになるが、大きな本社ビルのため、清掃をするのは大変なのだ。

 清掃スタッフは会議室や食堂など、あらゆる場所の清掃をしなければならない。

 そのためにはエレベーターを利用して目的の階 に行かなければならないため、私たちもエレベーターを利用させてもらっている。
  
 清掃スタッフなんてあまり目の届かないような、地味な仕事。
 だけどそんな私のことを、実はよく気にかけてくれる人がいるということを、私は知らなかった。

 そんなある日のこと。


「お、お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 その日は気温が急激に下がり、とても肌寒い日だった。

 五階にある会議室の掃除をするため、エレベーターに乗った私。そこにもう一人、七階にある試作室へと向かう男性。
 その人は商品開発部のリーダーである橋本(はしもと)恭夜(きょうや)さんだった。