橋本さんは、自分の着ているジャケットを脱ぐと、そっと私の肩に掛けてくれる。
「でも、橋本さんが……」
「僕は大丈夫ですから、あなたが着ていてください」
橋本さんだって寒いはずなのに、私を気遣ってくれる。
「……ありがとう、ございます」
再び、私の手を握ってくれる橋本さん。
この暗闇の空間が、この二人の距離が、私たちの距離を近くする。 ドキドキして胸の音がうるさくて、なんだか橋本さんの顔が見れない。
「……暖かい」
橋本さんのジャケット……すごく暖かい。橋本さんの温もりが心地よくて、怖さが少しだけ減った気がした。
「時枝さん、キャンディならあるけど……食べるか?」
「キャンディ……」
お腹が空いてるし、寒いし、早くここから出たいけど……。
橋本さんが一緒なら、それだって乗り越えられそうな気がした。
「イチゴ味。いらないのですか?」
暗闇の空間の中で、スマホのライトを頼りにポケットからキャンディを出して見せてくれる。
「……でも、いいんですか?」
「じゃあ僕はぶどう味を食べるから、一緒に食べましょう」
「……はい。ありがとうございます」
橋本さん、すごく優しい……。



