橋本さんは、こんな時でもとても冷静だった。
「……じゃあ私たち、ここから出られないってことですか?」
「今管理している警備会社の人が、今からこちらに向かってくれるとのことですが……」
ここから出られないなんて……そ、そんなのイヤだよ。
「そんな……」
橋本さんはどうして、そんなに冷静でいられるの……?
「やだ、私……やだっ」
「時枝さん、落ち着いて。……必ず、助けてくれると思います」
震える私の手をそっと握ってくれる橋本さん。その手は、少しだけ温かい手だった。
「大丈夫です、あなたは僕が守ります。そばにいますから」
「っ……」
橋本さんの手は温かくて、少しだけホッとした。
「……今はとにかく、助けを待ちましょう。それしか出来ません」
「はい……」
橋本さんは私の隣に、ゆっくりと腰を下ろす。
「ライト、眩しいですか?」
「……でも、ちょっとだけマシです」
光が少しでもあると、ちょっとだけマシになる気がする。
「そうですか」
どうして、こんな時まで冷静でいられるのだろうか……。私には不思議で仕方ない。
「こんなことになるなんて、ツイてませんね」
「……え?」



