【完結】エレベーターに閉じ込められたら、恋に落ちました。



 橋本さんは、こんな時でもとても冷静だった。

「……じゃあ私たち、ここから出られないってことですか?」

「今管理している警備会社の人が、今からこちらに向かってくれるとのことですが……」
 
 ここから出られないなんて……そ、そんなのイヤだよ。

「そんな……」

 橋本さんはどうして、そんなに冷静でいられるの……?

「やだ、私……やだっ」

「時枝さん、落ち着いて。……必ず、助けてくれると思います」

 震える私の手をそっと握ってくれる橋本さん。その手は、少しだけ温かい手だった。

「大丈夫です、あなたは僕が守ります。そばにいますから」

「っ……」
 
 橋本さんの手は温かくて、少しだけホッとした。

「……今はとにかく、助けを待ちましょう。それしか出来ません」

「はい……」

 橋本さんは私の隣に、ゆっくりと腰を下ろす。

「ライト、眩しいですか?」

「……でも、ちょっとだけマシです」

 光が少しでもあると、ちょっとだけマシになる気がする。

「そうですか」

 どうして、こんな時まで冷静でいられるのだろうか……。私には不思議で仕方ない。

「こんなことになるなんて、ツイてませんね」

「……え?」