「何がそんなに可笑しいんですか?」

「お供ってなんか、桃太郎みたいだと思って。春音はサル、いや、犬かな」

「よく吠えるって言いたいんですか?」

「違うよ。チワワみたいに可愛らしいって事だよ」

さらに黒須が笑った。

今日は笑われてばかりで恥ずかしい。
だけど、本当は黒須と一緒にいられて嬉しい。
逃げたいと思うのと同じぐらいに一緒にいたい。

ああ、なんで私はこんなに矛盾してるんだろう。

「食べようか」

黒須が優しい表情を浮かべて言った。
そんな顔してズルい。また胸がキュンってするじゃない。

「はい。いただきます」

緊張しながら割りばしを割った。
ドキドキし過ぎて蕎麦の味なんてわからない。

とにかく早く食べて、店を出よう。
こんな狭い空間に二人きりなんて耐えられない。そう思って、勢いよく蕎麦を吸い込んだら、咽た。
咳が止まらない。苦しい。涙も出た。

もう散々。

「春音、大丈夫?」

黒須がコップにほうじ茶を足してくれた。
それを飲んで何とか息をついた。

「慌てて食べるからだよ」

「のんびりしてたら昼休みが終わってしまいます。次も講義がありますから。それにペナルティもあるんでしょ?」

視線を向けると、黒須がニコッとした。