「結局、マイクロチップには何が入っていたの?」

帰りの飛行機の中で右隣に座る黒須に聞いた。

「戦争が起きるぐらい重大な機密データだとしか聞いていないよ。春音も沢山、秘密保持契約書にサインさせられただろ?アメリカにとってそれだけ重大な物だったようだ。それを日本人が欲しがったと聞いたが」

「アメリカの弱みでも入っていたんでしょう。それを武器に有利な交渉をしたいと政治家あたりが企んだんでしょうけど、失敗した訳ですね」

黒須の右側に座る相沢さんが言った。

「まあ、そんな所だろう」
「中身を見てから渡せば良かったですね」
「相沢は興味あったのか?」
「多少は」
「僕は早く帰る事しか頭になかったよ」
「あっさり帰してくれたよね」
「探し物が見つかったからもう僕には用がなかったんだろ。全く人の事を何日も拘束して。スマホも取り上げられ、病室から一歩も出られなかったんだぞ。最悪だったよ」

うんざりしたように黒須がため息をついた。

「黒須が容疑者である可能性が高いと思って、外部との接触はさせなかったんでしょう」
「僕は被害者だよ。肩を撃たれたし」
「でも、FBIが黒須を見張っていたから、すぐに病院に運ばれ適切な処置を受ける事ができたんですよ。危ない事はするなって注意したのに、あなたは本当にどれだけ周りの人間を心配させたと思っているんですか?」

相沢さんの小言が始まり、黒須が渋い表情を浮かべた。

「心配かけて悪かったよ。相沢」
「帰国したらゆっくりして下さい。立花さんが一緒に暮らしてくれますから」

相沢さんの言葉にドキッとした。