「延滞があって」
「ありゃりゃ、それは大変ね」

滝本さんがふんわりと包むような笑顔を浮かべた。その笑顔に和む。
10年近く勤めてるベテランさんで、仕事の仕方は滝本さんに教えてもらった。

小学生と中学生のお子さんがいて、恋愛映画が大好きで、社割目当てでこの仕事に入ったらしい。

このお店はクレームをいただく事が多いので、1、2年で辞めていく人が多いという話も教えてくれた。

家からの近さと、時給の良さと、90%引きで商品がレンタルできる事に惹かれてアルバイト先に選んだけど、辞めていく人が多いのがわかるぐらい、お客様に怒鳴られる事は多い。

今日も怒鳴られるのかな……。
延滞のメモを書きながら憂鬱になった。

「電話は私がしとくから」

滝本さんの一言に救われた。

「いいんですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます!滝本さんが神に見えます」
「ほめ過ぎよ」
「この間、延滞の電話で怒鳴られてからちょっと怖くなっちゃって」
「そういうのは聞き流せばいいのよ。私なんてほとんど話、聞いてないから」
滝本さんと顔を見合わせて笑った。
今日のシフトが一緒で良かった。