警備員の声がして、門の開く音がする。

 間もなく、男の人が入ってきた。

 艶のある黒髪に、目鼻立ちの整った高身長。

 南 虎歌(みなみ こうた)。

 この東雲家に並ぶ家系。

 私の許嫁で、私の好きな人。

 「虎歌さんっ。どうされたんですか?」

 久しぶりに虎歌さんに会えた嬉しさで声が弾む。

 「あぁ、紫乃か。久しぶりだな。白乃いるかと思って」

 愛想の良い笑顔で言った。

 その口から出たのは白乃という言葉。