と、そこへ携帯の着信音が聞こえてきた。
「あっ、私の携帯です」
慌ててベッドから飛び起きて携帯を探した、どこだろ。
「隼人院長、私の携帯知りません? どこにバッグ置いたんです?」
「すげぇ格好だな」
全裸に薄手のシャツを羽織っているだけだったんだっ!
再び慌ててベッドに逆戻り。
「どこに私の携帯を置いたんですか?」
「俺が悪いのか? 言い方に気を付けろ、知らねぇよ」なんて言いながら必死に探してくれる。
「あった、電話に出ろ」
受け取り電話に出たらマンションの大家さんからだった。
「どうしましょう、大家さんにめちゃくちゃ叱られました」
「泣きそうな顔して。トレぇな、どこででも怒られているんだな、なにしたんだ?」
大家さんの説明によると、住んでいた賃貸マンションのリビングのハロゲンヒーターを消し忘れて施錠した私は、そのまま出勤してしまったらしい。
部屋は無事だったけれどプラスチック製の取っ手が溶けていたらしく、隣人が異臭と立ちのぼる煙で気付いて消防署に連絡してくれたって。
もし木造で燃えてたらと思うとゾッとする。
「とんでもないことをしてしまい、居づらくなりました。どうしましょう、行くあてもないです」
「ここがあるだろう」
さも当然のように即答された。
「隼人院長、仕込みましたよね? 大家さんにいくら払ったんですか?」
「は?」
「普段優しい大家さんが凄い剣幕でまくし立てて怒りました、おかしいです」
「お前な、火事になりかけたんだぞ? どんな温和な人でも怒るだろう。土下座じゃ済まされないほど反省しろ」
「住人の私が火事を起こしかけたので、人格変わったと思うほど烈火の如く怒るのは分かりますが」
「が?」
「トントン拍子に話が進んで出来すぎてるのがおかしいです」
「とりあえず荷物はすべてセンター御用達の引越し屋に頼んである」
「用意周到すぎて怖いんですけど」
ピンポ──ン。
「ほら来た」
「怖い、やることが早くて怖い」
絶対におかしいって、ハメられた?
「このスピード感。まさかユリちゃんや先輩たちも仕込みですか? 女子会の飲食代交通費全額支払うとかの話に乗っちゃったとかですか?」
「その恰好で出て来るなよ、おとなしくベッドに寝ていろ。すぐに事は済む」
「ユリちゃんの答えてください、今後の口止め料とかも払ったんですか?」
お──い、ちょっとぉ。寝室のドアを閉めるときに「俺に任せておけ」とだけ言い残して、澄ました顔で玄関ホールに行っちゃった。
ユリちゃんに電話しよう、いったいどうなっているの?
電話に出たユリちゃんは相変わらず元気な声で、女子会の仕込みは私の推測通りで悪気なく認めた。
第六感っていうのかな。なんとなく頭によぎることがよく当たる。
隼人院長と同居なんて贅沢な暮らしは出来るし、頼もしいから安全も確保されたし良かったじゃんって、ユリちゃんは祝福ムード。
もれなく先輩たちもだそう。
私が酔いつぶれている間に女子会で盛り上がっているのが目に浮かぶ。
ユリちゃんが安心したって心から喜んでいるから許すけれど、今日からここで隼人院長と同居なの?
そういえば葉夏先生も隼人院長のことを安全パイって言っていたっけ。
本人にも寝室にも女性の気配はなさそう。
「あっ、私の携帯です」
慌ててベッドから飛び起きて携帯を探した、どこだろ。
「隼人院長、私の携帯知りません? どこにバッグ置いたんです?」
「すげぇ格好だな」
全裸に薄手のシャツを羽織っているだけだったんだっ!
再び慌ててベッドに逆戻り。
「どこに私の携帯を置いたんですか?」
「俺が悪いのか? 言い方に気を付けろ、知らねぇよ」なんて言いながら必死に探してくれる。
「あった、電話に出ろ」
受け取り電話に出たらマンションの大家さんからだった。
「どうしましょう、大家さんにめちゃくちゃ叱られました」
「泣きそうな顔して。トレぇな、どこででも怒られているんだな、なにしたんだ?」
大家さんの説明によると、住んでいた賃貸マンションのリビングのハロゲンヒーターを消し忘れて施錠した私は、そのまま出勤してしまったらしい。
部屋は無事だったけれどプラスチック製の取っ手が溶けていたらしく、隣人が異臭と立ちのぼる煙で気付いて消防署に連絡してくれたって。
もし木造で燃えてたらと思うとゾッとする。
「とんでもないことをしてしまい、居づらくなりました。どうしましょう、行くあてもないです」
「ここがあるだろう」
さも当然のように即答された。
「隼人院長、仕込みましたよね? 大家さんにいくら払ったんですか?」
「は?」
「普段優しい大家さんが凄い剣幕でまくし立てて怒りました、おかしいです」
「お前な、火事になりかけたんだぞ? どんな温和な人でも怒るだろう。土下座じゃ済まされないほど反省しろ」
「住人の私が火事を起こしかけたので、人格変わったと思うほど烈火の如く怒るのは分かりますが」
「が?」
「トントン拍子に話が進んで出来すぎてるのがおかしいです」
「とりあえず荷物はすべてセンター御用達の引越し屋に頼んである」
「用意周到すぎて怖いんですけど」
ピンポ──ン。
「ほら来た」
「怖い、やることが早くて怖い」
絶対におかしいって、ハメられた?
「このスピード感。まさかユリちゃんや先輩たちも仕込みですか? 女子会の飲食代交通費全額支払うとかの話に乗っちゃったとかですか?」
「その恰好で出て来るなよ、おとなしくベッドに寝ていろ。すぐに事は済む」
「ユリちゃんの答えてください、今後の口止め料とかも払ったんですか?」
お──い、ちょっとぉ。寝室のドアを閉めるときに「俺に任せておけ」とだけ言い残して、澄ました顔で玄関ホールに行っちゃった。
ユリちゃんに電話しよう、いったいどうなっているの?
電話に出たユリちゃんは相変わらず元気な声で、女子会の仕込みは私の推測通りで悪気なく認めた。
第六感っていうのかな。なんとなく頭によぎることがよく当たる。
隼人院長と同居なんて贅沢な暮らしは出来るし、頼もしいから安全も確保されたし良かったじゃんって、ユリちゃんは祝福ムード。
もれなく先輩たちもだそう。
私が酔いつぶれている間に女子会で盛り上がっているのが目に浮かぶ。
ユリちゃんが安心したって心から喜んでいるから許すけれど、今日からここで隼人院長と同居なの?
そういえば葉夏先生も隼人院長のことを安全パイって言っていたっけ。
本人にも寝室にも女性の気配はなさそう。


