自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ

　うろたえる姿を必死に取り繕う非枝先生に、隼人院長は弁解する余地を与えない様子。

「クレーマーをフォローしたのは人見だ。人見に礼を言いに行け」

「会ったら」
「今すぐ行けよ！」
　非枝先生に、かぶせるように隼人院長の荒らげた声が飛んだ。
　俊介先生が頑張ってフォローしていたもんね。　

　なんだかんだ言いたい放題言ったけれど、隼人院長は優しいときもある。
　自分のことよりもチームの俊介先生を想ってくれる。
　
「わ、分かったから怒らないでくれよ」
　そんな非枝先生の言葉なんか聞くこともなく、言うことを言った隼人院長はドクターコートをなびかせながら長い廊下を歩いて行った。

「おはようございます」
　関わりたくないから挨拶だけして足早に行こうと思った。

「阿加のせいで道永はイライラして、俺に八つ当たりしたんだよ。どうせ道永のチームでも足手まといなんだろ」
　つかまった。

「あいつは変に平等主義で、全員に均等に仕事を与えるからレベルが落ちて士気も低下する」
　そんな言われようはない。

　私に気遣ってくれる隼人院長チームは、優しく見守って私を育ててくれている。

「ひと通り仕込んで、あとは得意な仕事だけやらせてればいいのに。フッ、そういえばきみには得意な仕事があったか？」

　品定めをするように舐めるように見てニヤニヤする嫌な人。

「アル綿でも作っておくかコピーでもする程度か。あ、きみはコピーさえも、まともにとれないよね」

　気持ちを切り替えて進もうとすると、いつも非枝先生が阻止してくる。

　入職したてのころ、コピーをとるときにもの凄く緊張していて、診断書の原本を手差しトレイに置いてしまい原本にコピーをしてしまったことがある。

　そのときは一気に体が冷えて震えてきて、ひたすら平謝りした。

　このことを今でも根に待っているらしい。ねちっこく執着してしつっこい人。

「ごめん。なにを言っても頭が悪いきみには分からないよね」
　よっっっぽど隼人院長のことで悔しかったんだね！

　関係ない私にこんな八つ当たりをして意地悪を言う非枝先生に腹が立って腹が立って、あったまにくる！
　
　一発殴りたい、頭に血がのぼるのを理性が必死で抑え込む。
　おとなしい私だって怒るときはあるよ、理不尽さにふざけるなって思うときがあるよ。