自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ

「いつにする? 早ければ早いほど嬉しいなぁ」
「結婚式のパンフレット?!」
 私たち、いつから同居したんだっけ? 
「用意周到、気が早すぎる」
「どうせいつかは結婚するんだよ、早いことはないよ、今すぐにでも」 

「結婚式の予約って何年も前からしないといけないんでしょう?」

「爺ちゃんを誰だと思っているんだい?」
 巨大獣医療センターの理事長なだけあって、家柄や学閥つながりでコネクションがあるって嬉しそうに言うの。

 そういえば隼人院長の家柄も申し分なくて、立派なコネクションを持っているんだった。
 黙ってお爺ちゃんを立てているのも隼人院長らしくて賢い。
 
 なんて言っている場合じゃなくて、こんなに突然結婚するの?!
 
「披露宴はガーデンパーティーにしようよ。気候は春がいいね」
「嬉しそうにひとりで決めちゃって。お爺ちゃんの結婚式なの?」

「良案ですね、わたしも理事長に賛成です」
「隼人院長!」
 脇を締めて姿勢良く優雅に料理を口に運ぶ隼人院長は澄ました顔。

 焼きもち焼きからしたら早く結婚して安心したいのかな。それとも早く既成事実を作りたいとか?
 バカみたいに耳も頬も頭も熱くなってきた。

「パパやママも知っているの?」
「二人共、賛成してるよ。こんな申し分ない好青年大賛成だって大歓迎してるよ」

「わたしの両親もそれはそれは良縁だと賛成しております」 
「なんの心配もいらない。爺ちゃんに任せて麻美菜は結婚式まで、道永くんのもとで仕事に邁進しなされ」
 
 みんなが手放しで喜んでいるって外堀埋められた感ある。私には考える猶予もなし。

「理事長、お世話になります、どうぞよろしくお願いします」
 ちょっと隼人院長。
 
「なにか御不満でも?」
 向かい側から小首をかしげ、からかうような余裕な笑顔の隼人院長が聞いてきた。
「不満はないですが」
「考え込む必要はないよ。結婚しよう、二人なら幸せになれる」

「一緒に歩む道が決まってるなんて素敵じゃないか。夫婦二人で力を合わせて動物の命を救う、こんなに感謝される仕事はないよ」

「理事長の言う通りだ。二人の使命はひとつ、動物の命を助けることだ」

「道永くん、あとひ孫もなるべく早く。若いひい爺さんになりたいんだよ」
 けっこうお爺ちゃんはエゴイストなのね、強欲なんだ。