自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ

 夕食後、ソファーに座っているとくっついてきたり、指先で私の髪を遊んでみたり。
   
 まさに患者を可愛がるように猫かわいがりするから恥ずかしくてたまらない。

「今日は疲れただろう。さぁ、もう寝るぞ」
 私の手を引いて寝室に向かい、間接照明をつけた。柔らかな光が心にやすらぎを与えてくれる。

「同居初日に言ったよな、長年の習慣で裸で寝ているんだ」
「は、はい」    
「恥ずかしいのか」
「いいえ、リラックスしてほしいです。あのぉ」
「続きは?」

「私はどうしたらいいですか?」
「着ていろ、俺から脱がせる楽しみを奪うな」
「し、信じられないです! エッチエッチエッチ!」
「おいで、その口を黙らせなきゃな」

 ベッドに横になる隼人院長が長い腕を伸ばすと、するりと私を自分の胸の中に抱き寄せた。

「敬太先生は私のことミルク臭くて胸もお尻も背も小さくて魅力ないって」

「塔馬の毒牙にかからなくて安心だ。波島、あいつは油断ならない」

「もしかして、初日から焼きもちを焼いていました? 敬太先生が私を抱き寄せたとき」
「あいつは本当に手が早い、風紀が乱れる」

「あれは寝ぼけて、私を葉夏先生と間違えたんです」
「あいつが寝ぼけていたのも間違えたのも分かっていた」

「それでも焼きもちを焼くんですか? 私は敬太先生のタイプじゃないですし、私に手を出さなくても敬太先生は女の人は間に合ってるって」

「最近、麻美菜のモチベーションは周りから見ても、はっきりと変わった」
「大樋さんから教わりました。率直に言わないと先生たちとは信頼関係が築けないって。それに」

「それに?」
「仕事でも隼人院長の愛情を感じました」
「気付くの遅ぇな」  
「感謝しています」

「最初は受け身だったのが能動的に積極的に仕事に対して向き合うようになった。それは嬉しい成長だが」

「最初はおとなしかった看護師がだんだん気が強くなるって、敬太先生たちの話を気にしてます?」 

「麻美菜も気か強くなってきたから心配だ、塔馬が手を付けやしないか」

「なんでも自信過剰で自信家なのに心配するなんて本気ですか?」

「巨大医療センターの院長をやっているんだ、多少は虚勢を張っている」
 心を開いて本音を話してくれる。

「お前だから言うんだ。仕事では百戦錬磨で自信もある。だが、人を愛することは仕事とはわけが違う。愛を知れば心配にもなる」

 自信過剰な自信家が焼きもちを焼いて心配するんだ。恋って不思議、臆病になったり強くなったり。

 敬太先生が私なんか相手にしない。そんなことどうでもいい。
 それより。