朝輝先生はひとりっ子の私にとってお兄ちゃんみたいな存在。
いつだって励ましてくれて優しい。
ただひとつだけ、女好きで女遊びが派手なのを直してくれたら完璧な自慢のお兄ちゃんなのに。
「阿加ちゃんは優しいっすよね、可愛げがあって」
「それ私に対する当て付け?」
「まさか。なんの気なしに言ったら、すぐに噛みつく」
朝輝先生のハスキーボイスが少し裏返って否定した。
「そうだ。今だから言うけど阿加ちゃんのことはチーム全員で心配していたんだよ、性格が優しくて感受性が強いから」
「そうね、阿加ちゃんが入って、すぐのときにチームで話し合ったのよ。“しないように”って否定的な指示ばかりだと窮屈。“して”って肯定的な指示でポジティブにいきましょうってね」
まだ三ヶ月しか経ってないけれど懐かしそうに私を見つめる葉夏先生。
「阿加ちゃんは気に病みそうだから、少しでも負担を減らしてチームが居心地が良くなるようにって、みんなで協力しましたよね」
「そうね、あのころの阿加ちゃんは繊細で叱ったら傷付いちゃいそうだったわ」
こんなに思ってくれる温かいチームなのに、どうして飛んじゃう看護師が多数いたのか不思議で仕方ない。
「院長がいちばん考えてくれてるよ。恐怖を感じて震え上がるほど阿加ちゃんも叱られたよね。院長がキツく厳しい理由は動物の命をあずかってるから」
「阿加ちゃんには院長は厳しく映ってるでしょう。院長はひとりでも多くの獣医療従事者を育成して、精神的に巣立って行ってほしいのよ。厳しいのは愛情からなの」
「阿加ちゃんも、いつか院長の厳しさは愛情だって気付くよ。感謝する日が来るのを信じて頑張ろう」
「はい!」
「僕が院長にこっぴどく怒鳴られてもついて行きたい理由は、院長には愛情を感じるから」
「あんったは、めげないわよね」
そう、私が周りから目を見張るほど変わったって言われたのは柴犬のコータの手術がきっかけだった。
大樋さんからの言伝で院長が褒めてくれたのを知ったり、飼い主の前で褒めてくれたりしたのがコータのときだった。
「矢神先生ご覧になってます? 阿加ちゃんの顔付きが変わりましたよ」
「院長の愛情に気付いたようね」
「思ったよりも早かったっすね」
もう隼人院長のことを怖がらない、愛を知ったから。
「“まだまだ、お前には教えることがたくさんある”って院長の厳しい声が聞こえてきそうっすね」
「分かるわぁ。阿加ちゃん、おっかない院長が手ぐすね引いて待ってるわよ、覚悟してね」
「よく頭に叩き込んでおきます」
二人の冗談も笑って流せる余裕が出てきた今の私。
今ごろ隼人院長くしゃみしているかな。クリスマスの風邪がぶり返したと思っているかな。
いつだって励ましてくれて優しい。
ただひとつだけ、女好きで女遊びが派手なのを直してくれたら完璧な自慢のお兄ちゃんなのに。
「阿加ちゃんは優しいっすよね、可愛げがあって」
「それ私に対する当て付け?」
「まさか。なんの気なしに言ったら、すぐに噛みつく」
朝輝先生のハスキーボイスが少し裏返って否定した。
「そうだ。今だから言うけど阿加ちゃんのことはチーム全員で心配していたんだよ、性格が優しくて感受性が強いから」
「そうね、阿加ちゃんが入って、すぐのときにチームで話し合ったのよ。“しないように”って否定的な指示ばかりだと窮屈。“して”って肯定的な指示でポジティブにいきましょうってね」
まだ三ヶ月しか経ってないけれど懐かしそうに私を見つめる葉夏先生。
「阿加ちゃんは気に病みそうだから、少しでも負担を減らしてチームが居心地が良くなるようにって、みんなで協力しましたよね」
「そうね、あのころの阿加ちゃんは繊細で叱ったら傷付いちゃいそうだったわ」
こんなに思ってくれる温かいチームなのに、どうして飛んじゃう看護師が多数いたのか不思議で仕方ない。
「院長がいちばん考えてくれてるよ。恐怖を感じて震え上がるほど阿加ちゃんも叱られたよね。院長がキツく厳しい理由は動物の命をあずかってるから」
「阿加ちゃんには院長は厳しく映ってるでしょう。院長はひとりでも多くの獣医療従事者を育成して、精神的に巣立って行ってほしいのよ。厳しいのは愛情からなの」
「阿加ちゃんも、いつか院長の厳しさは愛情だって気付くよ。感謝する日が来るのを信じて頑張ろう」
「はい!」
「僕が院長にこっぴどく怒鳴られてもついて行きたい理由は、院長には愛情を感じるから」
「あんったは、めげないわよね」
そう、私が周りから目を見張るほど変わったって言われたのは柴犬のコータの手術がきっかけだった。
大樋さんからの言伝で院長が褒めてくれたのを知ったり、飼い主の前で褒めてくれたりしたのがコータのときだった。
「矢神先生ご覧になってます? 阿加ちゃんの顔付きが変わりましたよ」
「院長の愛情に気付いたようね」
「思ったよりも早かったっすね」
もう隼人院長のことを怖がらない、愛を知ったから。
「“まだまだ、お前には教えることがたくさんある”って院長の厳しい声が聞こえてきそうっすね」
「分かるわぁ。阿加ちゃん、おっかない院長が手ぐすね引いて待ってるわよ、覚悟してね」
「よく頭に叩き込んでおきます」
二人の冗談も笑って流せる余裕が出てきた今の私。
今ごろ隼人院長くしゃみしているかな。クリスマスの風邪がぶり返したと思っているかな。


