自信過剰な院長は既成事実を作る気満々で迫ってくるんですぅ

「すげぇな、聞いたか。こりゃ道永は当然として、手を握らんばかりの優しさ、クリーレンのオアシスの人見が相手をしたらいいんじゃね?」

「磯谷さん、優しいイケメンに励まされてコロッとやられて落ち着きますって、大丈夫っすよ」

「ったく、本当にてめぇら二人は軽いよな。人見も来るか?」
「ええ、飼い主のケアを勉強したいのでお供させてください、よろしくお願いします」

 隼人院長と俊介先生は綿密な打ち合わせをしながら、入院室に消えて行った。

「ぎゃあぎゃあ泣き叫んでいたような声でしたね」

「阿加ちゃん、大丈夫だよ、クリーレンの人気獣医一位と二位だからさ」
 よく分からない理由で朝輝先生が励ましてくれる。

「パニクって取り乱す飼い主は気が済むまで泣かせて叫ばせて暴れさせたら良い。人間の気力体力は持続しない、潮が引くように落ち着くもんだ」

 暴れさせる? 敬太先生さらりと言ったけれど暴れさせて大丈夫?

「磯谷さんみたいな激情型の飼い主は助かっても落ちて(死んで)も、どちらに転んでも騒ぐよ。僕ら、いちいち振り回されてらんない、やることやるだけ」

「ああ見えて道永には寛容さがある。飼い主のことも自分のことも追い込むことはしない。だからあいつのことなら心配すんな、お嬢ちゃん」

 トラブルにはならないって敬太先生が太鼓判を押す。さすが場数踏んでたくさん経験している先生は違う。

「阿加ちゃん、聞いた? さすがスペシャリストの塔馬先生。僕より励まし方が上手だよね」
 まさか、はいそうですとは言えない。

「塔馬先生のギャップに惚れたらダメだかんね」
 ない、それはない。

「研修医、あんたバカ? 院長と阿加ちゃんは今がいちばん楽しくて幸せなときなのよ」 

 いえいえ、私たちの実情はと言うと。

 最終的に既成事実を作ろうとする隙あらばの隼人院長と鉄壁の守りの私とで、只今キスのせめぎ合いの真っ最中なんです。

「そのラブラブ期間が過ぎた三ヶ月後はどうっすか」
「阿加ちゃんは一生敬太に惚れない。この子は院長みたいな堅物が好きだから」

 葉夏先生と朝輝先生って本当に恋愛話が好きなんだ。いつも二人で恋愛トークに花を咲かせて楽しそう。

「私なんかを敬太先生が相手にするはずないです、隼人院長も私なんかのどこが良かったのか」

「本来なら阿加ちゃんを手中に収めるのは僕だったはずなのに。人見先生のことは警戒してたけど、まさか院長だとは」

「呆れた、その自信はどこからくるの? それにあんた、院長が居ないからって言いたい放題ね」

「阿加ちゃんは親切で性格が優しくて可愛い子で最高なのになぁ」

「でもさ、そういう子って普通なら生き残れないわよね。気が強い看護師に潰される」

「案外、阿加ちゃんって芯が強いのかもしれないっすね」