会社からの帰り道、大きく溜息を吐く。

ここ数日天気もよくなくて空も曇り空。
どんよりしたそらと同じように私の心もどんよりしている。


しょうちゃんの気持ちが迷惑だなんて事はない。
好意を持ってくれているのは嬉しいわけで。
でも、私はそれに応える事ができないんだ。

だって、十も年の差がある。

かずくんとの年の差たった二歳だって尻込みした私に、十歳という壁は果てしなく高いものに見える。



駅前の公園を通り抜けると家の前の通りにでるのに少しショートカットできる。

公園の中にある噴水や草花でも見ながらのんびり歩けば少しは気も紛れるだろうか。
そう思ってのんびり足を進めていると、ふと噴水前を制服姿の男女が歩いているのが見えた。


「……しょうちゃん」


遠目からでもわかった。
しょうちゃんだ。

隣に歩いている女の子は、ニコニコと親し気になにやらしょうちゃんに話しかけている。

それはどこにでもあるような当たり前の光景で。
当たり前すぎて。

その違和感のなさにどこか胸の奥がちくりと痛む。
何か棘が自分の胸の奥に引っかかってしまったように、小さいけれど鋭い痛みが襲う。

何を話しているのかわからないけど、傍からみると高校生のカップルに見えた。
あれが当たり前の姿。
お似合いの高校生同士のカップル。

これが正しい形。

正しい在り方。

それでいい。

そう思うのに、どうして私は少しだけショックだなんて思ってしまっているんだろうか。

いや、気のせいだ。

これは気のせいだ。



何だかいてもたってもいられなくて元来た道へ引き返してしまった。