心の中で葛藤する俺。
バスの運転手に伝えれば、何とかしてくれるだろう。
ポジィティブに考え、運転手に向かって歩く。
そんな俺の横を
ポニーテールを揺らした女がすれ違った。
「ねぇ君、どこに行きたいの?」
男の子の隣にしゃがみこみ、優しく微笑んでいる。
通路の途中で、俺は足を止めて見入ってしまった。
「お姉さんに教えてくれないかな?
君の行きたい場所」
「僕が行きたいのはね……
ママのとこ……」
「君のお家かな?」
「総合病院……てとこ……」
「病院?」
「ママ……
入院しちゃったから……」
「じゃあ、お姉ちゃんと一緒に行こうか。
私も、病院に行くとこだったんだぁ」
明らかに違うだろうが!
ツッコミが口から飛び出そうになり
慌てて喉の奥に押し込む。
俺と同じ制服を着てるよな?
えり元に、1年のバッチもついてるし。
オマエ今から、高校の入学式だろうが!!



