「忘れ物をするタイミングも、私達、一緒の時があるよね」
「昨日はお互い、古典の教科書を忘れたな」
「鷹臣くんも忘れてくれて、大感謝だったよ」
「なんで?」
「私だけだったら
先生から嫌味の集中砲火をくらってたと思うから」
「アハハ~
嫌味の集中砲火って。なんだよそれ~」
机に頬杖えをつきながら
俺は隣の席の美月に、いじり笑いを飛ばす。
やっぱり、気づいてないか。
美月が忘れ物をした時
俺もわざと、忘れたふりをしてるってこと。
だってオマエさ、いっつもそうじゃん。
「鷹臣くんも、忘れてくれてよかったぁ」って
とびきり微笑んで、すげー感謝してくれるじゃん。
ポニーテールを揺らしながらの、エンジェルスマイル。
毒性強いんだよ。
何回見ても、心臓がしびれるんだ。
うわぁぁぁ。
オマエの笑顔、かわいすぎだろうが!って。
また美月の笑顔を見たいと思って
忘れ物してなくても、忘れたフリ。
どれだけ美月に惚れてるんだ!って、感じだよな?
先生に、怒られたっていい。
なんど怒られてもいい。
オマエの笑顔を、俺が独占できるなら。



