雪の日

「誕生日に准君に会った時、声を聞いた瞬間すごくホッとしてる自分に気付いて、准君が言った『辛いのはお前だけじゃない』って言葉がストンと胸に落ちたの。あの日、准君が『待ってるから』って言ってくれたことが、ずっと私の心の支えになってたんだと思う」

 麗子は少し考えてから続けた。

「だけど、やっぱり――」
「俺は」

 麗子の言葉を遮るように、准が口を開いた。

「お前に仁のことを忘れてほしいなんて、一度も思ったことねぇから」

 准は麗子が言おうとしていたこととは真逆の言葉を口にした。

「そんなこと無理に決まってるし、俺はそんなこと望んでるわけじゃねぇよ」

 麗子は目の前に広がる白く深い溜め息を眺めていた。
 雪は更に強く降り始めた。

「お前のことを大切にしたいと思う奴がもう一人いた――ただそれだけのことだ」

 体は凍えるほど冷たいはずなのに、喉の奥が焼けるように熱くなって涙が溢れ出す。
 当たり前のように言った准の言葉が、麗子を三年間の苦しみから解放した。