雪の日

「正直言うと……」

 准は俯いたままで少し躊躇うように話し始めた。

「何の保証もねぇのに、ただ待つのって結構きつい」

 何と答えていのかわからず黙ったまま准の横顔を見ていると、振り向いた准と視線が絡んだ。

「だから、久々に会った時ぐらい優しくしろよな」

 一瞬口元を緩めた准は、麗子の頭をくしゃくしゃと撫でると、徐に立ち上がった。麗子は准を見上げる。

「解散!」
「えぇっ!?」
「すっげームカついたから説教してやろうと思ったけど、やっぱさみぃから中止! じゃあな」

 准が背を向けて歩き出し、麗子は慌てて立ち上がって声を上げた。

「ちょっと待ってよ!」

 振り返った准が苦笑いしている。

「何? お前説教されてぇの? 実はドMか?」
「違うよ。まだ私の話が終わってない」

 准の表情が強張った。

「え? あぁ……今? ……に決まってるよな」

 目を泳がせ、しばたたかせる准は、明らかに動揺していた。ベンチに座ろうともせず、その場で立ち尽くしている。
 麗子はひとつ深呼吸をしてから話し始めた。

「さっき彼女が出来たって言われて、頭の中が真っ白になったの」
「え?」

 目を見開き、准はいくらか前のめりになった。

「頭のどこかで、准君がずっと待っててくれてると思ってたんだと思う。ほんと最低だけど、裏切られた感じさえしたの。自分はいつまでも答えを出さないでいたくせに……。准君の言った通り、酷い奴だよ」
「そんなことねぇよ」

 准は呟くように言った。