あれから半年が過ぎていた。
 買い物客が行き交う夕方のショッピング街。
 ショーウィンドウの前で足を止めた麗子(れいこ)は、ディスプレイされているウェディングドレスをぼんやりと見つめていた。
 誰もが一度は着てみたいと憧れる素敵なドレスだが、自分の手が届くことは決してないだろうと感じた。

(れい)?」

 聞き覚えのある声に、反射的に振り返る。
 そこには、都会の雑踏の中でもひときわ目を引く、長身で金髪の男性――(じゅん)の姿があった。
 麗子を「れい」と呼ぶのは准しかいない。

「やっぱ麗じゃん!」
「准君、久しぶりだね」
「おう。半年ぶり? てかお前、ちゃんと食ってんのかよ。また痩せたんじゃねぇの?」

 ぶっきらぼうだけど、どこか心配が滲む言葉。
 それを聞いた瞬間、胸の奥で張り詰めていた糸がぷつりと切れた。

「……麗?」
「ごめん」

 涙が堰を切ったように溢れ出し、麗子は思わず俯いた。
 准が小さく息を吐いた。困らせているのはわかっているが、どうにも収まりそうになかった。
 やがて、見かねたのか呆れたのか、大きく息をついた准は、無言で肩を抱き、ゆっくりと歩き出した。